歌川 学
富山県南砺市は人口約5万人、2004年に富山県の砺波平野南部から庄川上流の五箇山に至る8町村が合併して誕生した。南砺市は2013年の「エコビレッジ構想」で基本理念「小さな循環による地域デザイン」、自然と共生し地域資源を最大限に活用しながら次の世代へいのちを繋いでいくとし、地域自立型発展を理念で打ち出した。人口減は続くが移住者もあり、農業や地域産業や観光などで外から積極関与する「関係人口」創出もある。ここにデータセンター計画が発表された。最終的に完成すると北陸電力のあらゆる工場・業務施設・家庭などの電力消費量に匹敵する。
日本最大級のデータセンター計画
南砺市に受電容量3100MW(310万kW)という日本でも最大級のデータセンター計画が発表された。南砺市役所の誘致事業で、一部は市の保有する土地の売却である。立地地域は砺波平野南部から少し山に入り、豊かな田畑と森林が広がる旧福光町の西太美から小院瀬見(こいんぜみ)などにまたがる地区に計画、南砺市の里山緑地広場(森に囲まれ小規模体育館などもある公園)の地域、森林に囲まれたクレー射撃場、ライフル射撃場などのある地域に計画がある(全部は発表されていない[i])。計画はデベロッパーが主導しており、データセンターを運営する事業者は現段階では決まっていない。この場所は送電線と変電所があることで業者が選んだようで、データセンター需要が地元にあるわけではない[ii]。
全体計画の1割程度の第1フェーズは2026年着工、2028年運転開始と発表されている。第1フェーズの300〜400MW(30〜40万kW)の受電容量でも、富山市や金沢市に匹敵する電力消費が推定される。全体計画の受電容量3100MW(310万kW)では、消費電力量は北陸電力エリア、富山・石川・福井3県の全電力消費に匹敵すると推定される。
CO2排出量は再エネ電力でなく通常電力を使うと第1フェーズでも南砺市全体のCO2の約5倍、富山県第二の都市の高岡市並みの排出である。全体計画では富山県全体の1.2倍の排出が推定される。
データセンターは多くのコンピュータ、IT機器の排熱が大きくこれを空冷・水冷などで外へ放出する。外に出される排熱も巨大で、第1フェーズで市域全体の5倍、全体計画で数十倍の排熱がなされる[iii]。従来からある工場・オフィス・家庭・車などの上回るデータセンター排熱追加により、夏の猛暑をもたらす気象条件例えばフェーン現象の日に地域で大都市のヒートアイランドのような温度上昇の可能性がある。これは健康弱者の熱中症・健康などに悪影響を与える可能性がある。温度上昇が農業などにも影響を与える可能性がある。

図1 第1フェーズ(300-400MW) © 歌川学

図2 全体計画(3100MW、310万kW) © 歌川学
水の消費量は方法により差があるが、大量の水道または地下水が必要な可能性がある。第1フェーズで1日1万〜2万トン、最終的に7万〜15万トンの水を使用する可能性がある[iv]。南砺市水道事業[v]は1日2万〜2.9万トンで第1フェーズでその多くに匹敵する水をデータセンターが使う可能性、最終的には富山県西部工業用水道事業の2〜4割の水を使用する可能性がある[vi]。これらと契約できず、あるいは水道事業の設備増強費用負担の交渉が折り合わずに地下水を一部使うと、地下水・伏流水など地域の水環境・水循環に影響を及ぼし飲み水や農業用水や水環境・生態系などに影響を及ぼす可能性がある。
停電に備える非常用電源を火力発電で設置すると、第1フェーズでも北陸電力の中規模火力並み、最終的には北陸電力全ての火力相当の310万kWの非常用火力を備える可能性がある。この試運転では運転開始・運転終了時に大気汚染物質、粉塵などを排出する可能性がある。備蓄される燃料石油タンクも大きくなる可能性がある。停電対策の一部を蓄電池で賄う施設もある。リチウムイオン電池の使用は大型施設に対しては消防法で規制されているが、使用可能にする制度改定が検討されている。蓄電池使用の場合は、燃えやすい電解液などの危険物管理が課題になる。
データセンターの対策
データセンターの省エネは当面主に冷却装置と周辺装置の省エネが行われる。データセンターの「エネルギー効率」の指標で、データセンター全体のエネルギー消費(IT機器のエネルギー消費と冷却装置などのエネルギー消費の和)をIT機器のエネルギー消費で割った指数で求める。国の基準(規制ではない)でこれを1.4以下にする。2029年以降建設のデータセンターには2031年以降1.3にすることを規制化する。省エネのデータセンターはすでにこの値を1.1から1.2に改善、主に冷却装置を省エネにしている。
データセンターのCO2排出は再生可能エネルギー100%電力を購入すると排出ゼロになる。既に国内の一部データセンターは再生可能エネルギー100%電力転換を実施あるいは計画している。なお再エネ100%電力でも排熱や水消費はある。
排熱は、欧州で、フィンランドなどではデータセンターの排熱を、他地域でデータセンターやその他排熱の大きい施設の排熱を地域熱供給網に送り、地域でこれまで石油などで賄った暖房・お風呂の湯わかしなどを排熱で賄う例がある。南砺市には地域熱供給網がないが、東京都の制度で、都市再開発事業で、主に地域熱供給網から熱供給を得る想定だが、事業者が自ら地域熱供給網を建設・運用することを検討する義務を課す制度がある。
緊急時は、大気汚染公害対策の場合は、光化学スモッグ注意報発生で工場の運転レベル、トラック輸送などを一部停止することを求める制度がある。
データセンターをめぐる政策
データセンターは市町村が建築許可を行う。この際にデータセンターは桁外れのエネルギー消費があっても、非常用発電機や燃料タンク・蓄電池があっても「事務所等」で許可している。森林伐採、農地をデータセンター用地に転用する場合など土地改変では県や市町村が許可する。
都市計画もデータセンターは「事務所等」扱いで住居地域の一部まで許可される。一方、自治体が地区ごとに細かく指定して建設禁止することもできる。千葉県の市では地区を定め「事務所(データセンターの用に供するものに限る)」は「建築してはならない」と定める予定である。
環境影響評価制度は国の制度も都道府県制度もデータセンターは対象にしていない。非常用発電機も対象外である。ただ土地改変が環境影響評価制度対象になることがある。
国のデータセンター規制、性能要件を定める制度は先の省エネ制度、消防法の危険物管理など一部である。
自治体条例でエネルギー多消費施設の規制や条件を定めるものはほとんどないが、エネルギー供給施設(例えばメガソーラー)は立地地域を制限する制度を持つ自治体も多数ある。
まちづくり条例などの意思決定の仕組みで、巨大開発で地域で説明会を開催、事業者と地域住民で意見対立が見られる際には市町村が調停役になる制度を持つ市町村もあり、その一つの千葉県流山市ではデータセンター計画が中止になった。これに関連し制度運用で公聴会・説明会を自治体が事業者任せにせずに自治体主催や自治体が主体的に参加し行うこと、議会も主体的に関わること、市町村や地域が事業者との間で協定を結ぶことがありその際に地域環境や地域影響が懸念される点やデータセンター本体に関し先進的データセンターが満たしている数値を含む協定も考えられる。
拘束力はないが千葉県印西市や京都府精華町がこれ以上の誘致は行わないと宣言、印西市議会は駅前周辺のデータセンター建設制限を決議した。また制度ではないが複数地域で住民が裁判、公害調停提起の例がある。
電力多消費消費施設は送電会社に対し送電線接続手続が必要である。一部で再エネ発電接続が送電線空き容量がないと待たされるように電力消費施設も待たされることもある。
南砺市の地域発展にエネルギーを使う
南砺市は森林面積割合が大きく農業も盛ん、里山が広がる地域だが、工場・オフィス・家庭・車全体で2023年に光熱費に年間170億円を支出、多くが域外流出していると推定される。今の地場産業をいかし、光熱費削減対策や対策の域内企業の受注・雇用などで地域発展の可能性がある。このことは次回に紹介する。
まとめに代えて
データセンターは市全体のエネルギー、CO2、排熱、および水利用をもたらし、多くの課題があり、その悪影響も多くのことが未発表、もっと多くのことを調べてから議論することが課題である。地元でもっと根本から多くの人が議論に参加し、多くの知恵を持ち寄り、地域で自然を活かした営みをしている住民からも知恵と意見を出し、意思決定に加わっていくと良い。データセンターでない現状のエネルギー消費削減とエネルギーシフト、光熱費削減、地域発展について次回紹介する。
[i] 地域経済寄与について。データセンターの地域雇用は警備員などごく少ない。事業収入は多いが受け取るのは域外事業者であることが多い。立地自治体固定資産税の多くを占めるIT機器は法定耐用年数(償却年数)が短く機器分は速く減少する。
[ii] この地域は北陸電力送電線(中部電力との地域間連系線に繋がる)関西電力送電線(黒部川、庄川水系の関西電力水力発電所と関西電力エリアを結ぶ)がある。変電所もある。ただ後述のように最終計画の設備容量、電力消費を満たす発電には遠く及ばない。
[iii] 排熱推計は限られた情報から算出しているのでこれが確定値ではなくもっと低い可能性もあるので幅を持って捉えると良い。最終的に事業者が公表し、検証の上で年間および夏季、猛暑日の排熱の上限値として市や立地地域住民団体や影響を受ける事業者との協定に明記されると説得力がある。
[iv] 水道水源は各地に分かれ、また水は地域産業や家庭で使用している。全部データセンターに集めるのは難しい。
[v] 南砺市水道事業は1日2万〜2.9万トン。
[vi] 県西部工業用水全体の給水能力は1日40万トン。なおここでの水消費量は業界発表の「データセンター地域共生ガイドライン」の使用例を参考に受電設備容量を元に機械的に計算した。
歌川 学
『地球号の危機ニュースレター』
No.545(2026年7月号)

