山秋 真
能登半島地震の震源地だった石川県珠洲市で、任期満了にともなう市長選挙が2026年5月24日に投開票されました。2024年1月の大地震、それにつづく9月の奥能登豪雨のあと初の首長選挙です。6選を目指す現職の泉谷満寿裕(いずみや・ますひろ)さんと、前市議の新人・浦秀一(うら・しゅういち)さんの2人が立候補しました(いずれも無所属)。
二重被災による甚大な被害で人口が急減する状況のもと、復旧にむけた諸政策や復興公営住宅のあり方などが主な争点となりました。この選挙に際しておこなわれた公開討論会の内容は公共性が高いと考え、オンラインで視聴して文字に起こししたものを数回に分けてテーマ毎に共有させていただきます。その最終回をお届けします。
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2026年珠洲市長選挙・公開討論会(その3)
〜住まい・財源・子育て教育・医療介護・外部委託と市民参加など〜
【泉谷候補からの質問】
まずは浦さんが先ほど来、共同住宅では相続ができないというふうに言っておられますが、それは可能です。戸建であれ、長屋であれ、共同住宅であれ、一定期限を過ぎれば、これは相続譲渡といったものは可能であると、私は認識をいたしております。
それと、できるだけ戸建で進めていくということでございますが、どうやって進めていくのか。いま現在、復興公営住宅を、私、先ほど、もうすでに12団地200余りを発注しました、ということを申し上げましたけれども、どういう形で発注しているのかというのは、ご存知なのかどうなのか。
極端な話、いま、市民の皆様もご自分のお家を新築を進めてらっしゃいますけれども、なかなかハウスメーカーの手がまわらない、といったところがあります。そんな中で、じゃあどうやって、できるだけ戸建で発注をしていくおつもりなのか、お聞かせいただきたいと思います。
それと、選択のことで、憲法のお話も持ち出されましたけれども、新築することもできます、修繕することもできます、復興公営住宅に入居することもできます、これも十分、選択肢として揃っているというふうに思っています。
あとは、復興公営住宅につきましては、これは行政の住宅でございますので、できるだけ、ご要望にお答えしながら進めていきますが、時間を奪うということも、 私は、いかがのものかと。浦さんのおっしゃるように進めていくと、私は、相当な時間がかかる、発注すらできないんじゃないかと思います。その点いかがでしょうか?
【浦候補の回答】
分譲可能という、共同住宅でも分譲可能ということを、いま初めて聞いたわけですが、市民との話しあいの中で「分譲できない」ということを市の職員が発言した、これを市民の方は聞いておられます。
まず、これが本当なのかどうかっていうのは、後ほど確認したいと思います、分譲可能なのかどうか。
また、戸建の発注ですが、確かに戸建を発注する時には難しい面がたくさんあることは承知しています。例えば、金沢、かほくの業者が「珠洲市まではとても行けない」と言っていることも確認しています。
いま、4月1日から仮設住宅の目的外使用ということが、できることになったわけですが、そういったところに、県内に限らず県外の業者にも発注をかけて、なんとか来ていただいて、やればいいというふうに考えおります。
また、お急がれる方も確かにおいでます。そういった方には、場所はどこでもいいからとにかく入りたいと言われている方に対しては、共同住宅、今すでに15軒でしたか、発注されているそうですが、できたところから入っていただけばいい。
ただし、戸建を希望される方は、時間を覚悟してでも戸建を希望されるかどうか、これも再確認して、この計画を進めていきたい。以上です。
【泉谷候補からの質問】
いま浦さんがおっしゃられたのは、住宅の建築を進める上で、大工さん、そしてまた作業される方々の、宿泊ですとか便宜を図るといいますか効率を上げるという話をされましたけれども、私が質問しましたのは、どういう発注方法を取られるんですか、と。
戸建で発注する時に、どういう括りで発注するのか、1戸1戸発注していたら、それぞれに測量もしなくちゃいけない。用地の取得もしなければいけない。1戸1戸発注するんですか? それとも、どういう単位で、どうやって、どこに、発注するんですか? どういう入札方法をされるんですか?ということをお聞きしていますので、よろしくお願いをしたいと思います。
それとですね、点在することが、効率が悪いということもおっしゃられたかと思いますけれど、一方で、コミュニティを維持していかなくちゃいけない、再生していかなくちゃいけない。そういった面で、点在がいけないということが、一体どういうことなのか。点在がいけなければ、コミュニティをどうやって再生するんですか、という2点について、お願いします。
【浦候補の回答】
戸建の発注方法ですが、まず5軒、そして5軒以上、10軒以上、10軒以上。そういうふうな、まとまったものを町内単位で掌握し、これで県外の業者を含めた会社に、発注を行っていけばいいんでないかというふうに考えています。
それからもう1つ、何でしたか? ちょっとメモるのが。
今ですね、東北では、もう何百何千という戸建が立ってるんですね。これを、珠洲ではできない、というようなことは、これはもう完全な地域間格差であって、これはもう人権問題にも発展するような内容だと思います。
ですから私は、希望、何が、どれだけ時間がかかろうと、市民の希望する場所で、希望する建物で、住んでいただけるように力を尽くしたいと思います。
これが、私らが基本にしているのは、町内に戻ること、元の町内に戻ることでありますので、戸建の、コミュニティの、町内ごとの、そういったコミュニティを、もう一度元に戻す、復旧するといったことを目指して提案しています。
【復興財源と市の財政運営について(泉谷候補)】
発災直後から石川県選出の与党の国会議員の皆さん、そしてまた前知事のご尽力もございまして、非常に多額のお金が、国からございました。復興基金、創造的復興支援交付金といったことになります。
こちらの珠洲市で、じゃあその復興基金、創造的復興支援交付金が、いくらの枠があるかということになりますと、枠配分も含めて約70億円ございます。そのうち、これまでにおよそ25億円の使い道が決まった、あるいはもう使っておりますので、残りは約45億円ございます。
それと、多くの方々からご寄付を賜りました。ふるさと納税もございました。こちらにつきましては これまで2017年から3回に渡りまして奥能登国際芸術祭を開催してきた、そんなことで珠洲市の、ファンといいますか、関係人口の方々の、そうした熱い思いで、そうした寄付金が約43億円ございます。珠洲市の独自の復興基金、そうした寄付金等をもとに、地域振興基金も一緒にしまして、約73億円となりました。こちらにつきましては残り約35億円ございます。
そうしたことから、これまでの(経緯?)を含めますと、こうした復興に向けて使える基金等は、残り約80億円ございます。この約80億円を、効率的に使っていきたい。
そしてまた、これまでも国の制度、財政支援、補助率などにつきましては、要望を重ねて嵩上げをしてもらっております。不可能を可能にしてまいりました。今後も、財政的にも持続可能な復興を進めてまいります。
【教育環境と子育て支援について(浦候補)】
現在、市は3000万円という巨額の投資をして、外部のコンサルタントに統合問題を委託していますが、ここでも市民不在の学校統合を進めようとしています。
なぜ珠洲市の学校統合を、市民ではなく、外部の業者に丸投げするのか、理解に苦しみます。現状では90%以上の保護者が統合を望んでいること。そして昨年1年間の出生数が20名ということを考えても、速やかに統合に踏み切るべきだというふうに思っています。
中学校は緑ヶ丘1校に統合します。小学校については、最初に私が申しましたような、9つの学校のPTA、小学校のPTA、そして教育委員会とで、ワーキンググループを設置して、そこで話し合いをもとに市民の意見を吸い上げるような形の統合が、望ましいというふうに考えています。
空き校舎は、今回の地震で旅館民宿の廃業が相ついでおります。観光客が来ても宿泊が宿泊するところがないといったような状況が続いておりますから、日置ハウスのような宿泊施設としての利用も考えていますが、基本的には各地区で、ワーキンググループを設置して、 どのような使い方がいいのかということを、話し合いで利活用について決めていただければと考えます。
登下校には珠洲バスを利用し、保護者の負担を軽減します。
【教育環境と子育て支援について(泉谷候補)】
私はこれまで、地域と学校は一体であるという思いのもと、学校をできるだけ維持したい、学校をなくすことで地域の活力が失われることを危惧してまいりました。しかしながら震災後、児童生徒数が約3割減少いたしておりますし、令和6年生まれのお子さんが35名、昨年令和7年に生まれたお子さんはもう20名という状況になっております。
こうした中、昨年の10月から今年の1月にかけまして全ての小学校、中学校、義務教育学校、また、つばき保育園の保護者の皆様と、意見交換を行わせていただきました。いろんなご意見がございました。これからじゃあどうするかといったところですけれども、極端な話、珠洲市全体で小学校が1校、そしてまた中学校が1校、ということでありますと、選択肢がなかなか厳しい状況になりますので、それにプラスアルファで学校を考えたい。
しかし、そんな中で大谷の地域の皆さん、また保護者の皆さんは「児童数、生徒数が、もう本当に1人になっても学校を維持して欲しい」、そんな思いがございます。こういった思いは尊重してまいります。
それと、じゃあ宝立(ほうりゅう)小中はどうするのか、三崎をどうするのか、そういった具体的な議論を進めてまいります。
来月6月には、より魅力ある教育環境のあり方検討会を立ち上げます。これまでの検討会は各種団体の長の方が構成員でございましたけれども、できるだけ全ての学校のPTAの代表の方、保護者の代表の方に入っていただいて、できるだけ早く整備を進めてまいります。そのためにもコンサルを、これから入れてまいります。
【医療・福祉体制の維持について(浦候補)】
まず医療につきましては、病院のないところに人は住めない、ということから、とにかく、今の珠洲市総合病院の維持に向けて、投資を惜しむことなくやり、充実を図っていきたいというふうに考えています。
また、女性の方にとって、また家族の方にとっても、子供が産めないということが非常に大きな問題となっております。そうしたことを、私たちは、解決するために、出産予定日の1ヶ月前から出産を迎えるまでの入院費用を、珠洲市が全額負担するといったような、新たな制度の制定を考えております。
これが家族の事情で、例えば小さい子がまだいるから1週間前とか2週間前とか1ヶ月前とか、色々あるかと思いますが、出産までの入院費用を市が負担するといったような制度を、是非つくっていきたいというふうに考え、そういった制度を広く周知し、若い人たちにも珠洲に帰ってきてもらいたい。そういうふうに考えています。
また、老人ホームやデイサービスなどの介護職員が不足している現状から、ここでも新たな補助金制度を制定し、人材を確保して、市民の幸福につなげたい、福祉につげたいというふうに考えています。
【10年後、20年後の珠洲市の将来像について(泉谷候補)】
10年後の珠洲市、20年後の珠洲市に向けて、これから市民の皆様と共に新たな町をつくってまいります。そして各地区を再生してまいります。
さらに、新たな珠洲市をつくってまいります。各地区における新たな町の形の議論と、行政がキャッチボールをしながら、具体的に進めてまいります。
そして未来の珠洲市、将来の珠洲市、より快適で安全な町にしてまいります。そして、より活力ある豊かな町にしてまいります。各地をそれぞれ、特徴のある町の形にしてまいりたいと考えております。
生きがいとか希望を持てる珠洲市、若い方が珠洲市に戻り、活躍する、そしてまた多くの方々が移り住みたくなる、そんな珠洲市を築いてまいりたいと考えております。より魅力ある、そして時代の最先端を行く、日本の中心となる珠洲市を、市民の皆様と共にしっかりと実現をしてまいります。
【浦候補からの質問】
ただいまの発言で、例えば豊か、希望、魅力、そういった抽象的な言葉ばかりで、具体が全く入ってないんですよね。私は、あの空地がそのまんま残れば、町の形はもうなくなってしまうと、町としての機能が失われてしまうという風に思っているんですが、まず、具体的な考えがおありでしたら、この豊かな町、希望ある、魅力ある最先端、こういう風な、具体を1つ、挙げていただきたいことと、それから、空き地がこのまんま、私の考えでは10年も20年もそのまんま、残るんではないかと考えるわけですが、この空地について、どういうふうに今後なっていくと思われているのか、お話をお聞かせ願います。
【泉谷候補の回答】
市民の皆様がいま最も必要としているのは希望であると、思っております。先ほどから申し上げておりますけれども、インフラの復旧を急ぐ、そしてまた 復興公営住宅を含め、新たな町の形を築いていく、このことが市民の皆様の希望につながると思っております。復興公営住宅についても、できる限り早く進めていくことが、まさに希望になると思っております。
ただ、その時の町の形、例えば正院町においては、皆さんが新たな正院町の形として、正院公民館を旧JAのところに整備をしてほしい、そういったご要望がございます。今それに向けて動いております。
正院町においてはまずは公民館、そして今すでに建築を進めつつありますけれども、消防団の待機所もございます。そういったところを、しっかり整備をしていきます。それで、当然、復興公営住宅も神明町あるいは正院町小路のほうに、整備をしていきます 。
そして市民の皆さんの、町の皆さんの、独自の、自力の新築も、生まれてきております。そういったところをまた含めて、皆さんのその議論と合わせて、進めていきたいと思っています。
そしてまた、生産性を高めることが重要でございます。これから復旧に向けて、生産性を高めることで1人当たりの生産額、所得額が増える、豊かになる。そういったことを進めていきたい。
そしてまた、魅力が大事です。これまでも奥能登国際芸術祭も開催してきましたが、新たな魅力を、観光の再生そしてまた芸術祭の復活と、いろんな政策を絡めて、魅力をさらに高めていきたいと思っています。
【最後に市民に伝えたいこと(泉谷候補)】
令和6年日の能登半島地震、そして同年9月の奥能登豪雨によりまして、いま現在までに災害関連の方も含め198名もの、多くの方々の尊い命が失われました。改めて心から哀悼の意を表する次第でございます。そしてまた、珠洲市、震災前5600世帯ございましたが、ちょうどその半分、2800の住宅が失われてしまいました。
これだけの被害でございます。私は、災いを転じることが何よりも重要であると思っております。これから先、大きな災害に見舞われたけれども珠洲に暮らし続けて良かったと思っていただけるような、生きがいや希望を持つことができる、そして誰もが豊かで安心して暮らせる、珠洲市にしてまいります。
珠洲市の復旧、復興に向けて、ここからの3年、4年が本当に正念場です。ここが大事でございます。しっかりと、国や県と連携をして進めていかなければなりません。持続可能な珠洲市を目指し、市民の皆様と共に、より魅力ある、最先端の復興を、必ず成し遂げてまいります。
【最後に市民に伝えたいこと(浦候補)】
例えば、市民アンケートも、統合(?)も行わずに、10億円をかけて立てられた(市立)つばき保育園、そして2億5000万円をかけて建てられた潮騒レストラン、こういった大規模な大きな事業について、市民は、もう建設が始まってから知ったわけですね。
こういった市民不在の政治が、特に近年、行われてきておりました。こういうトップダウンの政治・市政から、これからはボトムアップ、市民参加型の市政へと、転換していきたいという風に考えております。
例えば、具体的には、市民の代表者と、職員の代表から、代表者を出し合って、そしてワーキンググループを設置して、市民参加型の市政をつくり上げていきたい。市民の声が行政に届く。そういったボトムアップの市政に転換したいというふうに考えています。
また、公務以外の時間は、直接市民の方との会話を増やし、市民から直接声を聞く機会を増やす、そういった時間を多くつくりたいというふうに考えています。庁舎内で、市民が話しやすいと思われる場所を、準備します。(了)
山秋 真
『地球号の危機ニュースレター』
No.545(2026年7月号)


