「地球号の危機ニュースレター」546号(2026年8月号)を発行しました。

富山県南砺市のデータセンター計画、富山県南砺市の温暖化対策と地域発展(後半)

南砺市の里山 © 歌川学

南砺市の里山 © 歌川学

歌川 学

 富山県南砺市は人口約5万人、2004年8町村が合併して誕生した。森林面積割合が大きく農業も盛ん、里山が広がる地域である。南砺市は2013年の「エコビレッジ構想」で地域自立型発展を理念で打ち出した。南砺市は脱炭素が技術的経済的に可能、また脱炭素を地域発展、地域の内在的発展に活かしていくことが可能である。

南砺市は巨額の光熱費を外部に支払っている

 南砺市は工場・オフィス・家庭・車全体で2023年に光熱費支出が年間170億円と推定される。この多くは域外流出と推定される[i]

図1 第1フェーズ(300-400MW) 

図1 南砺市からの光熱費流出 © 歌川学

お金の流れが変わることに注目

 光熱費は、対策をしないと、これまでウクライナ危機、イラン危機など何度も繰り返された化石燃料価格高騰で上昇する。石油だけでなく石炭や天然ガスも何度も高騰し、ピークよりやや下がるがいわば高止まりしている。温暖化対策を考えず地域経済だけ考えても、化石燃料に頼るのはリスクが大きい。化石燃料を減らし、省エネ再エネの温暖化対策により、光熱費は計画的に削減できる。

温暖化対策は地域内部に働くお金をもたらす

 化石燃料によるCO2排出など(人為的な地球温暖化、により地球の平均気温が上昇しこれが熱波や異常高温、大雨洪水、小雨干ばつなどの異常気象が頻発、気候が極端になった。少雨で山火事が増え、生態系への悪影響、農業への悪影響、熱中症など健康への悪影響などをもたらす。世界で温暖化の悪影響を小さくするのに世界でCO22019ー2030でおよそ半減、2050年に排出実質ゼロにしていく。日本全国も地域もこの排出削減を上回る対策をしなければならないが、対策で光熱費も削減し、地域発展に繋げられる。

 次に南砺市の省エネ再エネによる排出削減が技術的経済的に可能なことを述べる。

南砺市のエネルギー消費量とCO2

 南砺市は、購入電力のCO2排出が約45%、石油の排出が55%程度である図2)。

図2 南砺市のCO2排出割合推定

図2 南砺市のCO2排出割合推定 © 歌川学

 南砺市の再生可能エネルギー電力は、消費電力の10倍の可能性がある図3)。これ全てを開発する必要もないので、この中から、乱開発を防止し、地元優先で利用できるものを選んでこの資源を活用できる。

図3 南砺市の再エネ電力予測

図3 南砺市の再エネ電力予測 © 歌川学

 省エネ対策は我慢ではない。更新時にエネルギー効率の良い設備機器に変えること、新築で必ず断熱遮熱性能ができるだけ高い建築を選び既存建築を少しずつ断熱遮熱に改修すること、石油を使う設備機器は効率よく電化、車の更新時に燃費の良い車と電気自動車を選ぶことである。

 省エネと共に、地域主体の再エネ対策を行う。地域主体が地域で屋根設置太陽光、営農型太陽光など再エネを増やすとともに、購入電力を最終的に全て再エネ電力に変える。熱利用の一部を太陽熱利用に変え、熱利用の残りと運輸燃料は電気に変え再エネ電力にする。これにより南砺市のCO22030年に60%以上削減、2050年に省エネ・再エネ既存技術と改良技術[ii]普及で化石燃料ゼロ・エネルギーからのCO2排出ゼロの展望がある(図4)。

図4 南砺市のエネルギー消費とエネルギー起源CO2排出

図4 南砺市のエネルギー消費とエネルギー起源CO2排出 © 歌川学

南砺市の光熱費削減

 南砺市の企業・家庭・自治体などは2023年に推定で光熱費を170億円支出している。2030年には対策により光熱費を100億円に削減、2050年に56億円まで削減図5)、支払先も域外から地域に変える展望がある図6)。

図5 南砺市の光熱費削減、光熱費と設備費の削減

図5 南砺市の光熱費削減、光熱費と設備費の削減 © 歌川学

図6 エネルギーをめぐるお金の流れ

図6 エネルギーをめぐるお金の流れ © 歌川学

 省エネ再エネ設備費・建築費はかかるが、光熱費と設備費増加の合計を今の光熱費の6割程度に削減する可能性がある。南砺市の脱炭素対策、具体的には省エネ再エネ対策は全体として地域の利益になる。 

光熱費削減で地域発展

 光熱費を2030年に対策で70億円減らし、域内消費を拡大、農林業を含む地域の広範な業種でこの一部または多くを受注する経済効果がある。また対策を地域企業が一部受注する経済効果がある。断熱建築施工は地元建築、機器購入などを地元事業者が取り次ぐなどである。

 この2つの経済効果を、参考値だが富山県産業連関表で試算すると、2030年までの対策で、南砺市内で毎年50億円規模の経済効果、400人以上の就業創出(自営を含む雇用)の可能性がある。経済効果のある業種は、経済波及効果と就業創出の4割前後は省エネ再エネ対策業種(建設、商業、地域コンサル)である。地域の対策なので毎年均等ではないとしても継続的に需要が生まれる。残り6割は個人向けサービス、教育などの、対策には直接関係ない業種で、光熱費削減の支出増の受注を増やすのでこうした業種も含めて地域活性化ができる。

参考:データセンター進出時のエネルギー

 データセンターが進出し、2040年に最終フェーズの受電容量3000MW(300kW)2040年までに運転された時の南砺市のエネルギー消費は、2040年に現在の約25倍になる(図7)。光熱費は2023年の25倍の4000億円以上になる可能性がある。

図7 南砺市のエネルギー、データセンター運転時

図7 南砺市のエネルギー、データセンター運転時 © 歌川学

地域課題解決と脱炭素

 地域課題解決と脱炭素対策を組み合わせる例を示す。

 農業温室重油消費の燃料代は、温室加温を電気ヒートポンプに変えて効率よく電化し、屋根・敷地太陽光等の再エネ電力化などの化石燃料転換で大幅に削減できる。中小製造業の電気代、燃料代も、省エネ設備導入と屋根・敷地太陽光等で削減できる。いずれも設備費は光熱費削減で基本的に元が取れる。

 低所得世帯などが省エネ家電や断熱の投資ができず所得あたりの光熱費が高く、十分なエネルギーを得られないことをエネルギー貧困という。光熱費は省エネ再エネで大幅に削減できる。ただし低所得世帯は一般世帯よりも省エネ再エネの設備費が厳しいので公営住宅断熱や機器支援などが有効である。

まとめ

 先に検討したデータセンターの誘致による経済効果ではむしろ過大な環境負荷を地域に強いることになるが、今回検討した省エネ再エネ対策で大きなエネルギー消費、CO2排出削減が可能である。対策で光熱費を2030年までに70億円削減、光熱費と対策費の合計を増やさずに削減できる。むしろこのお金を地域に必要なら他の事業に振り向けることが可能だ。

 温暖化対策を地域発展に活かし、地域の内在的発展で、域外への光熱費流出を大幅削減し、地場産業を育て雇用を増やし関係人口を増やし人口減を抑え地域発展につなげる大きな可能性がある。


[i] さらに市内に域外企業発電所も多数あり、大規模水力の収入を推定すると市内主体の光熱費と同規模の収入がある可能性がある。

[ii] 海外で商品化されたが日本ではまだ、例えば農業電気機械、建設電気機械、電気自動車長距離トラックなど。

 

歌川 学

『地球号の危機ニュースレター』
No.546(2026年8月号)

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