「地球号の危機ニュースレター」527号(2024年5月号)を発行しました。

北海道北部に風力発電が急増 石狩湾洋上と合わせ県別トップへ

樺岡ウインドファーム

樺岡ウインドファーム © 井田均

石狩へ

 翌日は午前の遅くに稚内空港行きのバスにホテルから乗車した。ホテルから乗ったのが良かったのは、まだ座席に余裕があり座れたことだ。次の稚内駅前バス停から乗ったのでは、多くの乗客が乗ってきたこともあり、座れるかどうか分からなかった。

 稚内空港から新千歳空港までの飛行はプロペラ機で順調だった。新千歳からは列車で札幌へ。札幌駅から歩いて石狩へ行くバスの発着所へ。途中の蕎麦屋でソバを食べた。バス発着所で少し待って乗ったバスは1時間ほどで石狩市役所に着いた。夕方の4時を少し過ぎていた。

 バスに乗る前に電話で、石狩市役所の企画経済部企業連携推進課の佐々木拓哉氏に到着時刻を知らせてあった。佐々木氏は歓迎してくれた。

・まず石狩湾新港洋上風力発電所の現在の状況について

 「はじめは7月に基礎部分を設置、8月に入ってタワーに取り付けが始まりました。建設する予定の14基のうち現在の8月終盤では7,8基が建てられていると思います」

・地元の石狩市が享受するメリットについて

 「市税である固定資産税がまずあります。風力発電設備は固定資産税のうち償却資産に該当しますので、<償却資産取得額×減価償却率×税率の1.4%>で税額が求められます」

・年間の税収がいくらになるかについて

 「次年度以降課税が発生してから算出されます」ただし、課税情報は、機密性の高い情報ですので、税務課以外の課が把握する事は難しいとのこと

・稼働後何年間収入があるかについては、

 「稼働している限り課税となりますが、当課で把握する事は難しい情報となっております」 

・その他には地域へのメリットはないのですか?

 「石狩市内の一部、石狩湾新港地域、約2000haのうち100haを『再エネ100%エリア』に設定したい。この地域に住む住民や企業は、全ての使用するエネルギーを再生可能エネルギーだけを使うことが出来る、というものです」

 また、「この事業には環境省から補助金も出ます。何と3分の2も補助されるのです。2022年度から始められたこの事業は、対象となる地域を100カ所選びます。先ごろ1回目の選考が行われ、我々石狩市は20数か所選ばれた地域の中に入っていたのです。これも我々石狩市がそれまでの数々の地上での風力発電の建設に加え、石狩新港洋上風力発電所の建設を認めてきたことが環境省に選定された理由だと考えております」

石狩新港洋上風力発電所の建設現場へ

 この日は市役所の北数kmにあるホテルに1泊。翌朝は石狩湾新港花畔ふ頭駐車場へ行くつもりだ。ここは石狩湾新港洋上風力発電所を建設しているグリーンパワーインベストメントから得た撮影に適した場所だ。地図で見るとこの駐車場、宿泊しているホテルから2.2kmある。2200mだ。これが片道。往復だと4400m。前日のタクシー乗車に懲りていたので全部歩く心算だが、猛暑の中、耐えられるだろうかと不安もよぎる。

 10時前ホテルを出発。ホテルの女性従業員に、花畔ふ頭駐車場への行き方を確認してからのスタートだ。やはり暑い。風は強く、体に当たっている時は幾分マシだが、そうでない所は地獄だ。

 教わった通り、まずコストコを左に見ながら過ぎ、次にオレンジ色の日立を右手に歩く。なるべく日陰を歩きたいのだが、歩道には左側の空き地に繁茂する樹木群が枝を縦横に伸ばしていて歩くのを妨げている。だから車道の端を歩く。太陽はその力を誇示する如くに頑張っている。

 やがて道は海岸部を走る海岸道路にぶつかり、そこを90度右に曲がる。海岸道路の海側はコンテナが山積み。恐らく海運事業者がコンテナ置き場にしており、ここ石狩新港の物流を担っているのだろう。

 しばらくすると前方に海が見えてきた。遠くの海上に何やら大型船が停泊しており、その向こう側に風車の支柱、すなわちポールが2本立っている。

 「あれに違いない」と思い、さらに近づく。車両が何台か止まっている。これが花畔ふ頭駐車場だと確信した。もう少し大規模なものを想像していたのだが・・・。

 この駐車場、やや小高くなっており、グリーンパワーインベストメントの方がここを洋上風車撮影に最適な場所と推薦してくれたのも理解できる。 はるかかなただが、SEP船が発電風車の設置作業をしているのが見える。SEP船の向こう側には発電風車のポールが2本立っている。まだブレードは取り付けられていないが、これから装着するのだろう。右手には既に姿かたちが完成した発電風車も立っている。水面上に黄色い色に塗られた台座があり、その上にポールとブレードが装着されている。

 スペインのシーメンス・ガメサ・リニューアブルエナジー社が製造した1基8000kWの発電能力を持つ大型風車だ。これらが、この時は8基ほどこの海上に建てられている。最終的には14基が並び発電量用は11万2000kWになる。もっとも接続容量は9万9900kWに抑えられるが。

 グリーンパワーインベストメントによると、機材のうちブレードは上海から、タワーはベトナム、ナセルはデンマークから納品されたという。世界中から部品を集めたと言えるだろう。

 風が強いのには参った。カメラを構えても静止できない。だからこれらの写真は右に左にブレまくっている。陸地の海岸部から500mほど沖合に堤防が建設されている。

 海上風車の建設はさらにその向こうの沖合で行われているのだが、写真を撮ると、堤防と風車や建設中のSEP船が一体化してしまうようなものになるが、これはどうしようもない。

photo © 井田均
photo © 井田均

 風車を撮影していると、突然カメラの画面に「メモリー残量がありません」と言う表示が出た。残念! そういえば随分ムダな写真も撮っていたからなあ。でも洋上風車の写真も十分とは言えないまでも何とか撮影出来たし、まあ良いとするか。猛暑の中、帰路についた。

JR線からも撮れそう

 翌日は暇だった。実は5月か6月頃、石狩新港洋上風力発電所に関する資料展示館が8月頃までに開館すると言う情報を得ていたので、それを見学する時間をこの日の午前中を当てようと考えていたのだ。だがその開館時期は半年程度遅れるという事で時間がぽっかり空いたのだ。

 ホテルにチェックアウトギリギリの10時までいた。この日は午後遅くに小樽港からフェリーに乗るので、石狩市役所の佐々木氏に教わった手稲駅までタクシーで行く事にしていた。

 10時半ごろ手稲駅に着いた。やがて来た急行に乗った。急行だからほとんど駅には止まらない。やがて目の前に石狩湾の海が広がった。 何と、建設中の石狩湾新港洋上風力発電所が見えるではないか。しかも石狩市の花畔ふ頭駐車場からでは、堤防がジャマになって理想的とは言い難い写真しか撮れなかったが、この角度では、右側に石狩市があり、左側にまず堤防、次には風車を建設中のSEP船と絵に描いたような理想的な構図が展開しているではないか。カメラのメモリー残量を無くしてしまったことを限りなく残念に思った。

 小樽港からのフェリーは快適で、夕方の5時に小樽港を出港、翌朝新潟港に到着した。新潟からは安価なバスで夕方に新宿に着いた。

井田 均(市民エネルギー研究所)

『地球号の危機ニュースレター』
No.521(2023年11月号)

1 2 3 4 5