「地球号の危機ニュースレター」526号(2024年4月号)を発行しました。

北海道北部に風力発電が急増 石狩湾洋上と合わせ県別トップへ

樺岡ウインドファーム

樺岡ウインドファーム © 井田均

北部送電の吉村社長に会う

 困難な走行を経てタクシーはやっと北豊富変電所に着いた。この中にある北海道北部風力送電はこの北北海道に多数の大規模風力発電所が完成しつつある中、せっかく発電した電力を送る送電線が不足していた。

 本来送電線は北海道電力が資金を出して建設すべきものだが、それを待っていてもラチが開かない。そこで風車を建設するユーラスエナジーなど4 事業者がつくった「北海道北部風力送電」が、稚内市から中川町までの80kmに送電線を建設した。着工は2018年、完成は今年の2023年3月で、総事業費1050憶円のうち約4割を経済産業省が補助したという。

 事前の情報によると、川西ウインドファームを写真撮影するには、展望台と言われる地点が良いとされていた。

 2階の事務所で会った吉村氏は、すぐに私を外に連れ出す。乗って来たタクシーに乗車。広い敷地の中を走行する。ある所で下車。低い金網製のフェンスの向こうに緩やかな階段がつづいている。ゆっくり上った。やがて小高い地点についた。 辺りが見渡せる。真正面に立つ3本の高い鉄棟。それぞれから3つの方向へ電線が伸びている。「あっちの方につながっている送電線は稚内方面から来ています。奥の方へのラインは中川町方向へ、です」

photo © 井田均

 さらに左の方の彼方に風車群が見え、「あれが川南ウインドファームです」

 一渡り写真を撮った。お礼を言って辞去しよう。

photo © 井田均

ウインドファーム豊富には行けず

 次の目的地はウインドファーム豊富だ。来年2024年4月稼働を目指し、米国のゼネラル・エレクトリック社製4200kW機8基を建設中だと言う。

 建設しているLooopに尋ねた所、近くを走る道路からでも撮影は十分できるとのこと。期待十分だ。

 ただここからの行き方が十分には理解できていない。そこで吉村社長に、運転手に説明をお願いした。吉村氏は快く引き受けてくれ運転手にルートを教えてくれた。さあ出発。

 ところがしばらく行った交差点で運転手は車を停車させた。右を見る。左を見る。首を傾げる。ええい、という感じで直進させた。どうしたのか、と思う。ことによると道が分からなくなっているんじゃないのか。

 「メモしておけばよかった」小さい声が聞こえた。どうしたのですか、分からなくなったのですか。誰かにウインドファーム豊富への行き方を聞きたいが、道には人もいない。しばらく行くと道路工事をしている人々がいた。

 車を道路内で迂回させている女性に「ウインドファーム富岡へ行くにはどっちへ行けば良いのでしょう」と聞いてみた。その女性は「向こうに責任者の男性がいるから、その人に聞いて」と言う。車を男の方に寄せて同じことを聞いた。その人は「え、ウインドファーム富岡だって?」と言う。何だか全く分からない、という顔つきだ。再出発した。

 今思うに、「ウインドファーム富岡」を聞くのではなくて、ノート上にコピーした地図を見せて「ここは何処ですか」と尋ねた方が良かったのではないか。

 或いはそれでも分からないかも知れない。だが、そうした方が分かる可能性は大きかったと思う。運転手はさらに数十分車を走らせた。道は次第に細くなり遂には舗装が消えダートになってしまった。運転手は焦っているようでもあるし平気のようでもある。 「もういい。稚内に戻って」シビレを切らせて私は言っていた。

ウインドファーム豊富

 写真は撮れなかったが、このウインドファーム豊富について少し説明しよう。

 Looopが51%、Looopの株主の中部電力が49%出資してつくった「豊富Wind Energy合同会社」が運営している。2022年6月13日に着工、2024年4月の稼働開始を目指している。現在設置済みの発電風車は米国のゼネラル・エレクトリック社製の4200kW機が8基。発電能力は3万3600kWになるが、出力は3万kWの抑えるという。

 Looopによるとこの風力発電所は近くを通過する道路から良く見え撮影も十分しやすいという。写真が撮影出来なかったのはかえすがえすも残念だった。

 タクシーは加速した。途中芦川ウインドファームと思われる建設中の風力発電所の側を通った。写真を撮った。

 芦川ウインドファームはユーラスエナジーが2024年4月稼働を目指して建設中の、スペインのシーメンス・ガメサ・リニュ-アブル・エナジー社製の4300kW機を何と31基のものだ。発電能力の総計は12万88kWにもなる。

 稼働開始の8カ月前だから風車は全機建設済み。ただブレードは回転しておらず止ったままだ。

 タクシーは先ほど寄った北豊富変電所の前を再び通過して一路稚内に向かった。「風車地帯に来る時もこの道を通って来ればよかったのに」と、これは私の心の中の声だ。

 やがてタクシーは稚内の宿泊しているホテルに着いた。運転手は小さい声で謝っていたが、吉村知己北海道北部風力送電社長のルート説明を十分理解しなかった罪は大きい。大量減点は免れない。

 1,2時間後、ホテルから散歩に出た。ブラブラ歩く。JR稚内駅へ行った。駅員がいた。「不通はまだ続いていますか」と聞いたら、「いいえ、6時過ぎから正常運転です」えっどういう事だ。ホテルのフロントで8時過ぎに確認した時、「不通のままです」と言う答えだった。それでタクシーの出発地点を、JR勇知駅から稚内市内のホテルに変えたのだ。

 それが6時過ぎから正常運転だなんて・・・。JR稚内駅の時刻表を見ると、1日の稚内駅発の列車は4本しかなく、始発は5時21分発。次の2本目が6時56分発の特急で、3本目は私が乘車しようと考えていた10時28分発の鈍行だ。

 駅員が言っていた「6時過ぎから正常運転」ということは、2本目の特急から普通に走っていたという意味であろう。

 ホテルのフロントマンがパソコンで確認した情報が間違っていたという事のようだ。この日の夜は稚内市内のシケた飲み屋でホッケの煮物と日本酒。

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