【助成金事業報告】 ピースアクション! アフガニスタン・パキスタン両国の平和の取り組みと両者の連帯のサポート

奇跡の一枚。タリバン兵士と。「平和」のメッセージをもつのは当団体職員(2018年6月)Photo : 日本国際ボランティアセンター(JVC)

【助成金事業報告】
ピースアクション! アフガニスタン・パキスタン両国の平和の取り組みと両者の連帯のサポート

報告: 小野山亮
日本国際ボランティアセンター(JVC) アフガニスタン事業統括

1. はじめに

当団体は、約18年にわたり、アフガニスタンにて、緊急救援、医療保健、教育、また近年には平和と非暴力の学びあいの活動などを行ってきた団体です。パキスタンでは 2005年の震災後の救援活動を実施しました。

活動を行う中で、紛争と平和に関するアフガニスタンとパキスタン両国の切り離せない関係について見聞きする機会がありました。武装勢力は両国国境付近に存在し、越境しながら行動しているとされること、両国間には、相手国側が自国の利益のために自分たちを攻撃する武装勢力を支援しているとの非常に強い相互非難もあり、両国間で協力して平和に向けた行動をとることを難しくしているともいわれていることなどです。

両国の問題は相互に影響し合っており、平和の実現には、両国での取り組みとお互いの協力が必要であると思われます。アフガニスタンで平和の取り組みを行っている団体としても、パキスタンで同様の取り組みを行い、また両者の連帯ができないかと考え、大竹財団のご支援を得て、紛争と平和に関してのパキスタンの状況や、パキスタンにおける様ざまな平和の取り組みなどについて調査を行いました。結果について、下記にご報告いたします。

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パキスタンのマーケット/Photo : 日本国際ボランティアセンター(JVC)

2. 青少年の過激化について

調査では、青少年の過激化についての話を最も多く聞きました。市民は戦闘や厳しい治安状況の犠牲となっており、このことがまた、暴力的な過激主義の影響を受けやすい状況をもたらしうるという悪循環にもなっています。青少年はこうした過激主義の影響を受けやすく、自爆攻撃の大多数が青少年によって行われているともいわれています。パキスタンのこうした青少年たちは、アフガニスタンでの戦闘にも向かっているともいわれています。

宗教学校(マドラサ)においても、青少年の過激化が起こっているともいわれますが、過激化はマドラサといった場所に限らず、大学などの場所でも起こっているとも聞きました。パキスタンでは、多くのアフガニスタン難民の子どもたちがマドラサにいるとの情報もあります。マドラサは、通常、授業料が無料で、無料の食事や寄宿施設も提供しており、貧困層、低所得の家庭の子どもが多いようです。マドラサの子どもたちと一般 の学校の子どもたちとのつながりがないとの指摘もありました。マドラサの運営側の理解と協力も得ながら、マドラサの子どもたちと他の社会とのつながりをつくっていくことが重要のようです。

また社会的、経済的に不利な立場に置かれた青少年への対応が必要との意見もありました。職がないことから戦闘員になることもあるとの指摘、青少年への経済的機会の提供、教育の供与、(紛争で親を失ったという意味なのか)孤児たちが復讐をするなどないようにすること、中途退学者が自暴自棄になって過激化の影響を 受けることのないようすることなどの必要性の指摘がありました。アフガニスタンとの国境地帯とパキスタンのその他の地域との格差についての指摘もありました。

青少年一般に関して、社会的にも経済的にも青少年のための空間が縮小している、青少年に関する政策への予算が十分にない、そうした政策について青少年自身との協議がないといった指摘もありました。ストレスにより、70%の青年が薬物を使用しているともいわれているようです。青少年が感情を吐露することが必要との指摘もありました。青少年のカウンセリングや、集まったり話をしたりする場の提供なども行われているようでした。

近年の新たな脅威として、サイバースペースでのプロパガンダがあり、法規制等も必要となってくるという意見もありました。これは青少年に限ったことではないと思いますが、サイバースペースは青少年がアクセス しやすい空間ではないかと思います。

3. 平和の取り組みの具体例

① 青少年自身による平和の取り組みの促進

上記のように青少年は過激主義の影響を受けやすい状況にあり、そうした状況ではない場を提供することが必要ではないかと考えられます。そうした場としては、平和的・非暴力的な形で、感情を表現・共有できる、自己実現を行う、他者と関わる、社会参加する場が考えられます。そこで、青少年にこうした場を設け、また、進んで、自らがそうした社会参加の活動を行うことで、さらなる自己肯定を平和的な形で行ってもらうとともに、社会の平和につながるそうした活動自体も促進していく取り組みが行われているようです。

具体的には、さまざまな主体(青少年グループ、地域社会(指導者ほか)、市民社会(NGOや市民団体など)、 政府・地方行政関係者(教育や青少年関係省庁部署)、宗教指導者、メディア、研究者など)とも連携しながら、多様な層から青少年を選び(地理的分布・ジェンダー・民族・ 宗教/宗派・(紛争による)障がい・年齢・個人的背景などを考慮)、 地域の平和づくり、リーダーシップなどについて学んでもらった後、グループに分かれ、青少年自身が考える地域での平和づくりの活動を立案してもらい、それを実施してもらうというものです。考えられる活動として、青少年センターの設立、スポーツや 文化のイベント開催、地域の争いごとの原因になりうるゴミ捨て場の清掃キャンペーン、地方選挙や地方行政への働きかけなどがあるようです。

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青少年のワークショップの様子/Photo : 日本国際ボランティアセンター(JVC)

② 過激化防止のためのラジオ放送

過激思想のプロパガンダへの対抗として、ラジオ放送による取り組みも行われていました。法の支配、人権といった普遍的価値などを訴えているようでした。国境地帯に関わる時事問題の討論と相談、青少年が果たす役割、女性が置かれた状況・権利、トランスジェンダー、社会的統合など、ホットなトピックが扱われているようでした。より多くのリスナーに届ける、魅力的な番組にするために、バランスが取れていて話し方が分かっている人をプレゼンターにする、多様な層によるホスティングにする(女性・年長者・青少年・壮年層・それら組み合わせなど)、ライブフィードバックを受け付ける、テキストメッセージを発信するなどしているということで した。

③ 伝統文化の回復

地域の統治システムの変化などから政治的な空白期間があり、それを狙って過激活動が開始されたところもあるとのことでした。無償教育やマドラサでの教育、過激集団のいうところの迅速な裁判・正義の実現などが、心に響くものとして利用され、訴えられたようです。また「銃とともにあるパシュトゥン人(その地域の民族)」といったイメージの美化などが行われたとのことでした。しかし実際には、これらとは異なるその地 域の伝統文化があるのであり、こうした過激集団のメッセージによる伝統文化の喪失に対抗し、その回復を試みる活動もなされているようでした。伝統的な詩や歌のラジオ放送や、音楽・文化・スポーツのイベントやプログラムの実施などがその例のようです。

④ 宗教・宗派間の共生

過激主義の中では、他者の宗教や宗派を認めない、またそれを排除する動きが見られます。一般社会でも、他者への偏見や、教育カリキュラムの中での特定集団のステレオタイプ化などが見られるとのことでした。

そうした中、イスラム教徒、キリスト教徒、ヒンドゥ教徒、シーク教徒、また 様々な宗派の共生のための活動を行っている宗教者の団体もありました。厳しい治安状況の中での活動だったようです。諸宗教施設での象徴的な平和活動、共同での祝祭、大学での宗教/宗派間対話、青少年による平和の絵やエッセイのコンテスト、様々な宗教・宗派とともに行うグリーンキャンペーンやスポーツ活動、少数者の権利保護のための提言や誘拐された宗教指導者の解放への努力などの活動を行っているようです。

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パキスタンのお茶/Photo : 日本国際ボランティアセンター(JVC)

⑤ 開発の活動における多様な主体の参加

平和、人権といった言葉が敏感にとらえられる状況もあり、開発の活動に多様な主体に参加してもらうことで、直接的に平和という言葉を語らずとも、多様な主体の利益実現、共生、争い解決、平和の実現を行うという取り組みもあるようでした。

4. アフガニスタンでの当団体の平和の取り組みについて

当団体では、アフガニスタンにて、平和・非暴力の学び合いの活動を行っています。人びとの身近にある戦闘、暴力、闘いのプロパガンダなどに対抗するため、家庭や地域における争いの解決などを、人々が実際に経験した事例などから学び合い、広げる活動です。「力」が支配する同国に生き、銃を取るなどしていた現地職 員が、当団体入職後、米軍による軍事行動への非暴力の抗議などを見聞きして変わっていった体験を元にしています。

学び合いの結果、子どもたちや地域から暴力を遠ざけるため、おもちゃの銃、麻薬などを売っている店を閉鎖し、罰金を支払わせるキャンペーンにつながった事例や、家庭内での暴力や争いが防がれた事例なども報告されています。

こうした平和の活動は、これまで当団体が実施してきた同地域での医療保健・教育の活動にも基づいてします。地域での保健や教 育活動を主体的に担うための住民グループの組織化を支援してきましたが、こうしたグループが村の結束や安定に寄与し、実際に暴力や争いを防いだ事例も報告されています。

さらに、今年の6月、初めて実現した武装勢力のタリバンとアフガニスタン政府との停戦時には、両者の対話の仲介を 住民が行うという自発的な動きもみられ、当団体の現地職員もこれに関与しました。対話を実現した市民はその後、停戦延長を求めて、県知事との話し合いも実現し、これには市民に加えて、一部のタリバンのメンバーが参加しました。

こうした取り組みは、上記のパキスタンの平和の取り組み と共通の部分も多く含んでいると考えています。

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争い解決などの経験交流の様子/Photo : 日本国際ボランティアセンター(JVC)

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平和・非暴力の学び合いのためのブックレット/Photo : 日本国際ボランティアセンター(JVC)

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奇跡の一枚。タリバン兵士と。「平和」のメッセージをもつのは当団体職員(2018年6月:アフガニスタンでの政府とタリバン停戦時)/Photo : 日本国際ボランティアセンター(JVC)

5. まとめ

以上、紛争と平和に関してのパキスタンの状況、平和の取り組みをご報告し、アフガニスタンでの当団体の平和の取り組みについてもご紹介しました。今後、当団体のこれまでのアフガンニスタンでの経験と今回の調査の結果を踏まえて、パキスタンでの平和の取り組みやアフガニスタンとの連帯の可能性につき、具体的な立案と実施を行っていく予定です。

6. 追記:新規団体「平和村ユナイテッド」の立ち上げについて

その後、アフガニスタン・パキスタン両国の平和の取り組みと両者の連帯のサポートのためによりよい体制が模索されました。

この活動は、人道支援・復興・開発といった活動というよりは、平和をつくることを直接の目的とした活 動であり、その目的を団体自体の目的とする団体が行うほうが、より活動目的が明確になり、より目的実現もしやすくなるという観点から、平和をつくることを直接の目的にする「平和村ユナイテッド」という新規 団体の設立につながり、この活動を実施することになりました。また、平和をつくることを直接の目的としている団体は少ない中、こうした団体が存在することの社会的意義もあります。

今回の調査を踏まえ、パキスタンでは、この新規団体が、青少年による地域での平和活動の立案や実施をサポートする活動を行う予定です。

一方で、アフガニスタンでは、これまでの活動の経験からも日本国際ボランティアセンター(JVC)の活動 は継続し、当面、新規団体は、自身のパキスタンでの活動とJVCのアフガニスタンでの活動との経験交流などを通じ、両国の平和の取り組みの連帯を図っていく予定です。

以上、詳しくは新規団体「平和村ユナイテッド」のウェブサイトをご参照ください。

参考 平和村ユナイテッド

ー『地球号の危機ニュースレター』No.469(2019年7月号)掲載 ー
image 地球号の危機ニュースレター No.469(2019年7月号)