「地球号の危機ニュースレター」537号(2025年6月号)を発行しました。

〈アフリカの旅7〉ツムクェでの暮らしが始まる

村一番のお店の前には多くの村人たちが集まる © 岡部一明

村一番のお店の前には多くの村人たちが集まる © 岡部一明

「神」が通っていった

 象を間近で見ると、「神」のような気がする。

 牛や犬なら、人間と同じ程度の目線で、人と同じ世界に生きている存在だ。しかし、象は違う。別の世界に生きている。遠くを見、我々とまったく違うことを考え感じているようにみえる。いや、実は象だって、危険かも知れない我々人間に神経をとがらせ、内心恐れているのかも知れない。しかし、少なくとも外見的にそんな風情は少しも感じさせず、悠々と歩き、水を飲み、踵を返してねぐらに帰っていく。優しく見える目は実は厳しく、威厳をたたえて万物を透視している。小山のような巨体がゆっくり移動し、何を考えているのかわからない目で、私たち地上の世界を見渡す。

 神々しい「神」が前を通って行った。

 このキャンプ場のある宿では、柵の向こうに水飲み場をつくり、野生象がやってくるよう仕向けている。象にとっても水が確実に得られるというのはありがたいだろうし、住民にとっても、観光客が喜ぶのでありがたい。互いにウィンウィンというわけだ。

 幸い、象はめったなことで人を攻撃しない。これが、ライオンやピューマが来るようになってはまずいだろう。あくまでも象を引き寄せることだけに限定しているようだ。

カントリーロッジの柵の向こう側に水飲み場をつくり、象が来るよう仕向けている。ロッジ敷地内には入ってこない © 岡部一明

カントリーロッジの柵の向こう側に水飲み場をつくり、象が来るよう仕向けている。ロッジ敷地内には入ってこない © 岡部一明

安心して象を見てられる。象の見物席もある © 岡部一明

安心して象を見てられる。象の見物席もある © 岡部一明

象に出会ってしまった

 ロッジから見る象は、柵があって安全だが、野生の象は村のあちこちに出没しているようだ。踏みつけられて人が死亡する事件もまれにあるらしい。土の道に、象の巨大な糞や足跡が残っているのを見る。散歩に行こうとすると「今、象が通って行ったから気をつけろよ」と言われることもある。ずっと後になってのことだが、散歩中に野生の象に出会ってしまったこともあった。定石通り、慌てて逃げたりせず、面と向かったままゆっくり後ずさりして難を逃れた。

少なくとも2頭の象が居た(1頭は茂みのうしろ)。こちらを見ている。柵越しでなく、同じ空間に存在してしまうと恐怖を感じる。何とか逃げ延びで胸をなでおろした。恐怖の中で写真を1枚撮ったのは誉めてあげたい © 岡部一明

少なくとも2頭の象が居た(1頭は茂みのうしろ)。こちらを見ている。柵越しでなく、同じ空間に存在してしまうと恐怖を感じる。何とか逃げ延びで胸をなでおろした。恐怖の中で写真を1枚撮ったのは誉めてあげたい © 岡部一明

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