山秋 真
能登半島地震の震源地だった石川県珠洲市で、任期満了にともなう市長選挙が、2026年5月17日に告示されました。立候補を届け出たのは、6選を目指す現職の泉谷満寿裕(いずみや・ますひろ)さんと、前市議の新人・浦秀一(うら・しゅういち)さん(いずれも無所属)。
2024年1月の大地震それにつづく9月の奥能登豪雨のあと、初めてとなる首長選挙です。二重被災により甚大な被害を受けて人口が急減する状況のもと、復旧にむけた諸政策や復興公営住宅のあり方などが主な争点となりました。
投開票日の5月24日には、午前7時から珠洲市内の10カ所で投票が始まりました。午後6時には投票が締め切られ、午後7時から開票です。
午後8時40分ころ、開票の結果が発表されました。泉谷候補と浦候補の得票数は、それぞれ4,270票と2,243票でした(有効投票6,513票、無効投票67票、不受理0票、不足-1票)。
当日有権者数9,198人(男性4,324人、女性4,874人)、投票者数6,579人(男性3,140人、女性3,439人)、投票率が71.53%(男性72.62%、女性70.56%)というなか、投票者数の半数をおおいに超える4,696人が、23日まで行われた期日前投票で投票しています。
その期日前の投票場所は、珠洲市役所1階の市民ホールが4,406人(男性2,080人、女性2,326人)、5月18日から21日まで毎日市内3カ所(4日間で計12カ所)を巡回した移動式の期日前投票所が290人(男性101人、女性189人)でした。二重被災のあと、それまで町内にあった投票所がなくなって投票する場所は遠くなり、移動式の期日前投票所が巡回する先や日時も限られ、投票の機会が損なわれている人の存在が示唆されます。
なお期日前投票を除く1,883人は、(a)市内10カ所の投票所で行われた当日投票に加えて、(b)避難先などの滞在先で行う不在者投票、(c)指定病院・施設などで行う不在者投票、(d)郵便などによる不在者投票という4種の合計となります。
これらを踏まえて総合的に考えますと、いま問うべきは、民主的な政治の方法のひとつとして一翼を担ってきた選挙の形骸化をいかに防ぐか、あるいは、この状況でどのように民意を届けて政治に反映させるか、ではないでしょうか。
そのような問題意識から、今回の珠洲市長選挙に際して実施された公開討論会は公共性が高いと考え、オンラインで視聴して文字に起こししたものを、数回に分けてテーマ毎に共有させていただきます。
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2026年珠洲市長選挙・公開討論会(その1)
【泉谷候補の自己紹介&市政で力を入れたい分野】
珠洲市長の泉谷でございます。復旧復興に向けて、また人口減少を抑えるためにも、まずは道路や橋梁、河川、上下水道など社会資本の復旧を加速してまいります。
そして、これまでのコミュニティの維持再生を図ることができるよう、復興公営住宅を含め、新たな町の形を作りだしてまいります。また農林水産業も含め生業の再建、そして観光の再生に取り組んでまいります。
人口が減少する中でも豊かに暮らせるよう 生産性を高めてまいります。さらに新たなビジネスが生まれるよう支援するとともに、蓄養事業であったり、そしてまた陸上養殖、またそれに伴う、食事ができる場所など新しいプロジェクトを進めてまいります。そしてまた、より子育てしやすい環境、より魅力ある教育環境を整えてまいります。
加えて医療や福祉の再構築も図ってまいります。 また文化スポーツの振興もはかってまいります。市民の皆様が生き生きと安心して暮らせるよう迅速に取り組みを進めてまいります。
【浦候補から泉谷候補への質問】
復旧復興に向けての取り組みと人口減少対策ということですが、私は、人口が奥能登で1番減っているこの珠洲市、昨年の10月1日現在で34.04%という数字が出ているわけです。地震前と比べれば、なお人口減少は進んでいるという風に思うんですが、その一因として共同住宅、分譲も相続もできない共同住宅が一因になっているんではないかと思うんです。
結局、自分の家にはならない、分譲ができないということで、早くに珠洲市を離れて金沢近郊市街の方で中古の家を買われた方が、結構多くおいでるわけなんです。
それで、この人口減少の原因はどういったところにあると市長は思われていますか? 他の市町と比べまして非常に人口減少が進んでいるわけですが、この人口減少が進んだ責任というか責任の所在は、どのようにお考えなのか、どこにおありとお考えなのか、ということをお伺いします。
【泉谷候補の回答】
はい。昨年10月に実施されました国勢調査でございますけれども、昨年の10月と言いますと、非常に珠洲市はまだまだ混乱をいたしておりました。そんな中で国勢調査の調査員が調査を進めようと思っても、なかなか回答していただけない、そんな方々、そしてまた住宅の被害も大きくございましたので、元々のコミュニティが大きく変化してしまっていました。そんな中で、 国勢調査を正確に実施すること自体が困難であったと思っております。
そうしたことから行きますと、その前の、前回6年前の国勢調査の結果から行きますと、およそ9300名ぐらいは結果としていらっしゃるだろうといったところがありましたが、結果的に8500名余ということになってしまいました。
この差はですね、やはり、なかなか難しい状況であったということが要因としてあると思います。
そして先ほど浦さんが、共同住宅といったお話をしましたけれども、これはまだこれからの話でございます。珠洲市といたしましては、ようやく交費解体が軌道に乗り始めた一昨年の秋に、一早く、このままではいけないということで、珠洲市独自に住宅の新築あるいは修繕に関わる住まいの再建の補助制度を設けております。新築の場合は200万円、子育て世帯の方はさらに300万円といった手厚い制度を設けましたので、そういったこともご理解をいただきたいと思います。
【浦候補から泉谷候補への質問】
先ほど私、質問したんですが、分譲も相続もできない復興公営住宅の計画と、人口減少を招いた、このことについて、どのような関連性があるか、また、そのことを、どのように考えておられるかを、お願いします。
【泉谷候補の回答】
浦議員のお話でございますけれども、先ほども申し上げましたが、そうした戸建なのか、長屋タイプなのか、共同住宅タイプなのかといったところによる、人口減少について、どういった影響が出るのかというのは、まさにこれからの話でございまして、今現在、3月の5日に、初めてとなる復興公営住宅の起工式を、馬緤町で取り行うことができました。
今現在はですね、約200戸余りの復興住宅について、もう発注を終えております。今月末まできますと、だいたい15団地、350戸ほどの復興公営住宅の発注を終えることができると思っています。まさにこれからでございますので、そうした影響って言いますか、どういう方針で進めるかということは、直接人口減少に影響したかどうかというのは、私はちょっと明確には言えないのではないかと、思っております。
申し上げますとですね、発災直後に、若い子のお母さん、お子さんがいらっしゃるお母さんたちが、なかなか断水も長期化しそうだということで、一旦珠洲市を離れられた。児童生徒数が、だいたい3割ほど減少しました。そういったところが、まず要因であると思います。
そうした方々に再び戻ってきていただけるように、これからまたより魅力ある教育環境の整備を進めてまいりますし、(…聞き取れず…)、給職も無償化しております。
【浦候補の自己紹介&市政で力を入れたい分野】
現在珠洲市議会議員をやっております浦秀一でございます。私は32年間、中学校の教師として、舳倉島を皮切りに松波中そして市内4つの中学校で、教鞭をとってまいりました。生徒からはGTUという風に呼ばれていました。野球、バスケットボール、バレーボール、卓球などの部活動にも力を注いできました。趣味はギターの引き語りです。
いま市政で力を特に力を入れたいこととして、これも人口減少対策、これに力を注いでいきたいという風に思っています。
そのために短期的な目標といたしまして、子どもたちが帰る家を残す。すなわち、戸建を軸とした復興公営住宅への計画の見直しに全力で取り組み、現在空地となっている町並みの再建を目指します。
また中期的な目標としては、一次産業と観光業、この発展に力を注ぎ、そこから雇用を生み出したいという風に考えています。長期的には、現在住んでおられる方が、ずっと住み続けたい、そして、いま市外に出ておられる方が、珠洲に帰りたい。そしてまた市外の方が、珠洲に移住したい、そう思えるような、みんなが、多くの方が憧れる、価値と魅力のある珠洲市をつくりたいという風に考えております。
【農林水産業と伝統産業の再生について(浦候補)】
まず農業につきましては、市民の高齢化によって耕作放棄地、そして休耕田が年々増えてまいりました。こういった耕作放棄地や休耕田、これを土地交換や買い取ることによって、まとまった土地を確保して中規模農業に推進していきたいという風に考えています。
具体的には、例えば農作物、そして果樹園、この果樹園栽培については山野知事もおっしゃっておられます通り、能登に果樹園を広げていきたいという風に考えています。品種としましては、いろんな、りんご、バナナ、ぶどうなどを考えています。また、珠洲でとれた特産物に、加工することによって付加価値をつけ商品化するといった、加工場の誘致も考えています。
漁業については、マグロの養殖に成功した私の母校・近畿大学の協力を得まして、能登の海に、沖合いに、魚の養殖場を誘致していきたいという風に考えています。このあいだ珠洲のほうから、富山にある近畿大学水産研究所、富山実験場を見学してきました。そこではノドグロの養殖を進めているわけですが、是非とも魚を養殖したい。
伝統産業につきましては、都市圏にアンテナショップを展開したいという風に考えています。(つづく)
山秋 真
『地球号の危機ニュースレター』
No.543(2026年5月号)


