「地球号の危機ニュースレター」544号(2026年6月号)を発行しました。

りんごの南限、みかんの北限(第2回)八郷でも5アンペア生活

5アンペアブレーカー © 早川幸子

5アンペアブレーカー © 早川幸子

早川 幸子

 2011311日、午後246分。三陸沖を震源とするマグニチュード9.0の巨大地震が発生。これに伴う大津波が、岩手、宮城、福島の3県を中心とした東日本の太平洋沿岸に甚大な被害をもたらしました。そして、地震と津波の影響でブラックアウトした東京電力の福島第一原子力発電所では原子炉の冷却機能が失われ、メルトダウン(炉心溶融)したのです。

 あれから15年が経過しましたが、現在もまだ事故処理は続いています。20257月の東京電力の発表によると、メルトダウンした核燃料(デブリ)の本格的な取り出しは2037年度以降になる見通しで、当初予定していた2051年の廃炉完了も雲行きが怪しくなっています。


エネルギーの大量消費生活を見直す

 原発事故によって大気中に放出された放射性物質は、当時、私が暮らしていた東京にも降り注ぎました。「直ちに影響はありません」という国や電力会社の対応に疑問を感じた私は、原発反対のデモや集会に参加するようになりました。ところが、しだいにそうした自分にも疑問を抱くようになったのです。

 震災後の自分の暮らしを振り返ってみると、少しばかりの節電は意識していたものの、暑さ寒さをしのぐのは相変わらずエアコン頼み。電子レンジやドライヤーなどの電気製品を当たり前のように使い、以前とほとんど変わらないエネルギーの使い方をしていました。デモで「原発反対!」と声をあげている私が、家に帰って電気使い放題の生活をしていたのでは説得力がありません。

 1980年度に4850kWhだった日本の年間発電量は、東日本大震災前の2010年度には2倍以上の1303kWhまで増加。その3割が原発によって発電された電気で占められていました。原発はエネルギーを大量消費する社会を生み出し、それに乗じてきた私も無関係ではありません。まずは自分自身がエネルギーを大量消費する生活を改める必要があると考えたのです。そこで始めたのが、電気の契約を最小限にする「5アンペア生活」です。

 電力自由化以降、電力各社は様々な料金プランを提示していますが、従来からある東京電力の料金プランの中で、一般家庭で利用されることが多いのが「従量電灯B」。アンペア数ごとの基本料金に加えて、電気の使用量に応じた料金を支払うというものです。契約するアンペア数を下げると基本料金が安くなるだけではなく、一度に使える電力量が減るため、電気製品の使い方に工夫が必要になり、結果的に使用量が減っていきます。

 この究極のアンペアダウンが5アンペアで、正式名称は「従量電灯A」というプランです。基本料金はなく、電気の使用量が最初の8kWhまでは328.08円で、使用量が1kWh超過するごとに29.08円が加算されていきます(20266月現在)。もともとアパートの廊下などに使うことを想定してつくられたもので、一度に使える電力は5アンペアまで。電圧が100ボルトの場合、消費電力が500Wを超える電気製品は使えません。例えば、電子レンジは10001500W、電気炊飯器は5.5合炊きで1300W程度、電気ポットは7001000W、ドライヤーは1200W程度の消費電力が必要で、5アンペア生活では使うことはできません。一般家庭には向かない契約なので、電力会社もその存在を大きくアピールしていません。ただし、できるだけ電気に頼らない生活をしたい私には魅力的な料金プランで、20131017日から従量電灯Aに切り替えて5ンペア生活を始めました。

5アンペア生活で1年間の電気代が7610円に

 5アンペア契約では、いまやどこの家庭にもあるエアコンや電子レンジ、掃除機などは使えないため、さまざまな工夫が必要になります。私は、次の2つを実践して、できるだけ電気に頼らない生活を始めました。

 ①消費電力が500W以下の電気製品を使う
 ②電気を使わない昔の道具を活用する

5アンペアでは、電気製品が何も使えないのでは?」と思うかもしれません。でも、照明器具、冷蔵庫、洗濯機、扇風機、冷風機、パソコン、プリンター、スマートホンなどは、消費電量が500W以下なので使えます。我が家にはありませんが、テレビやコタツも使用可能。5アンペアでも使える電気製品はけっこうあるのです。通常は消費電力が500Wを超えるドライヤーやアイロンなどは、トラベル用などの消費電力の低いものを探して使っています。掃除機も通常は消費電力が500Wを超えますが、充電タイプのものなら使えます。

 もうひとつの工夫は、昔の道具を活用すること。ごはんは、土鍋を使ってガスで炊くと、電気炊飯器よりも早く美味しく炊きあがります。冷凍ごはんの解凍は、蒸篭を使うとホカホカで炊き立てのようになります。また、冬の暖房は灯油ストーブが大活躍です。部屋を暖めるだけではなく、やかんをかけておけばお湯も沸かせて、蒸気も出るので、エアコン+電気ポット+加湿器の3役を同時にこなしてくれます。寝る前には、やかんのお湯を湯たんぽに入れれば、布団も温まってぐっすり眠れます。掃除は電気掃除機も使いますが、箒やモップも併用。畳の上をすべるザッザッという箒の音はなんとも心地よいものです。

蒸篭で温めたごはん © 早川幸子

蒸篭で温めたごはん © 早川幸子

 こうして5アンペア生活をした結果、電気代は驚くほど安くなりました。5アンペア以前の201111月~201210月の1年間の電気代は、30アンペア契約で52949円。月平均では4412.4円でした。それが、5アンペア生活以降の201311月~201410月の1年間の電気代はトータルで7610円。月平均では634.2円で、以前の約7分の1まで抑えることができたのです。この間、一度もブレーカーが落ちることなく、5アンペア生活を送ったのです。

 エアコンも電子レンジも使えない5アンペア生活は、スマートライフには程遠く、いわゆるタイパ重視の向こうを行く暮らし方です。でも、その一見すると不便な暮らしは、ただただ我慢を強いられるものではありません。電気製品の特性を調べて5アンペアでも使えるものを知り、昔の道具のすばらしさを再発見し、快適に暮らす方法を見つけていきました。そして、いつしか5アンペアで暮らすのが当たり前になっていったのです。

2人暮らし・一軒家で5アンペア生活に挑戦

 東京で3年間の5アンペア生活を送った私は、201610月に茨城県石岡市の八郷地区に移住してからも、その生活スタイルを続けました。当初は友人とのシェアハウスだったので、今度は2人で5アンペアです。しかも、小さな平屋とはいえ一軒家。でも、私が「八郷でも5アンペア生活をしたい」というと、友人は「面白そう、やってみようよ!」と受け入れてくれたのです。

 まずは、照明器具を点検し、白熱灯だったところはLEDに交換。節電できる環境を整えて、5アンペアで暮らす方法を友人にも共有しました。電気炊飯器や電子レンジは使わず、土鍋や蒸し器が調理器具の主力でしたが、友人は5アンペア生活に挑戦してくれました。時々、ブレーカーが落ちてしまったこともあったけれど、粛々と5アンペア生活は続けられたのです。

天火オーブン © 早川幸子

天火オーブン © 早川幸子

 総務省統計局の「家計調査年報(家計収支編)平成28年(2016年)」によると、2人以上の世帯の1年間の電気代は121196円。月平均では約1万円です。一方、5アンペアハウスの201611月~201710月までの1年間の電気代は、ふたり暮らしでも1496円。月平均では874.6円でした。私たちは、一般家庭の1カ月分の電気で1年間を暮らしたということになります。

 ただ、夏の暑さの中でも音を上げずに5アンペア生活ができたのは、2017年の夏の平均気温が比較的低かったことが理由かもしれません。茨城県(水戸)の8月の平均気温は28.6度で、真夏日は32日間。猛暑日は1日しかありませんでした。ところが翌2018年の8月の平均気温は31.7度で、真夏日は49日間。猛暑日は9日間に及びました。

 そして、夏の猛暑は、アンペア生活にも黄色信号を灯すことになるのです。(以下、次号)

夏の暑さをしのぐ簾 © 早川幸子

夏の暑さをしのぐ簾 © 早川幸子

早川 幸子

『地球号の危機ニュースレター』
No.544(2026年6月号)

 

 

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