「地球号の危機ニュースレター」538号(2025年12月号)を発行しました。

〈アフリカの旅8〉サン族伝統村落へサイクリング

遠隔の村にあるサン族屋外博物館 © 岡部一明

遠隔の村にあるサン族屋外博物館 © 岡部一明

キャオ君、ダム君と再会

 昨日会ったキャオ(Kxao)君とダム(Daqm)君が迎えてくれた。本当に自転車で4時間半かけて来たと知って驚いてくれた。確認はしなかったが、この驚き方からすると、これまで自転車で来たような奴は私一人くらいだったのではないか。

 ダム君は、通訳のキャオ君がたまたま村で会った友人だと思っていたが、やはりここで働いてい同僚だったのだ。改めて聞くとキャオ君(39歳)は、ダム君(30歳)のおじさん当たるとのこと。昨日は8人の外国人観光客が来て、夜のキャンプファイアーを囲んでの村人総出の踊りなどもあったという。きょうは、私一人だ。そのためわざわざ2人が残ってくれたようで申し訳ない。

 プログラムの一覧表を見せられたが、私は最も簡単そうな「ブッシュ・ウォーク」(サバンナ歩き)1時間半220Nドルを選んだ。事情を話して30分くらいの短縮版でお願いするようお願いした。250Nドルを出すと、お釣りがない、と言ったが、もちろんそれはチップですよ、とええカッコした。一人のためにわざわざ対応してくれてこちらこそ申し訳ない。

狩猟採集民、現れる

 入り口付近の建物や土産店のあるあたりから少し入ると、昔と同じ簡素な藁ぶきの屋根のような集落が現れた。そこでダム君がどこかに消えた。「どこに行ったの?」と聞くと、キャオ君が「伝統的衣装に着替えてくるのさ」。

 しばらく伝統集落を見学していると、何と半裸の狩猟採集民がブッシュの中から現れたではないか。ダム君だ。なんと、そういう役だったか、ダム君よ。さっきまでの普通の服を着たダム君は、むしろ現代風の若者だが、突然、変身してしまった。

 そして彼が主導してブッシュの中を案内する。いろいろな木の種類や、食べられる植物や毒、採集の仕方、動物の足跡、数日前のだろうという象の糞…。いろいろなものをサン族の言葉で説明して、それをキャオ君が英語に訳す。私は、ダム君の変身への興奮も収まらないまま、熱心に説明に耳を傾け、写真を撮った。

ブッシュの中から狩猟採集民現れる。サン族の伝統的な家屋の並ぶ集落が「生きた博物館」だ

ブッシュの中から狩猟採集民現れる。サン族の伝統的な家屋の並ぶ集落が「生きた博物館」だ © 岡部一明

ダム君がブッシュの中を案内する。食べられる木の実はどれか、根っこで食べられるものは。毒は。残念ながら今は乾季なので、食べられる木の実などは多くない。試しに少しかじってみたが、水気がなく食には適さないようだ

ダム君がブッシュの中を案内する。食べられる木の実はどれか、根っこで食べられるものは。毒は。残念ながら今は乾季なので、食べられる木の実などは多くない。試しに少しかじってみたが、水気がなく食には適さないようだ © 岡部一明

女性は植物採集にたずさわり、男性は1日もしくは2日がかりで狩りにでかける。ナミビアではこの地域だけ(ニャエニャエ保全区)で、サン族による弓矢による伝統的狩猟が今でも認められている。サン族は、大きな弓で1発で仕留めるのでなく、毒を塗った小さな弓矢を使う独自の方法をあみ出した。獲物に矢を当てた後、長時間あとを追う。虫や植物から毒を採る方法をダム君が紹介する

女性は植物採集にたずさわり、男性は1日もしくは2日がかりで狩りにでかける。ナミビアではこの地域だけ(ニャエニャエ保全区)で、サン族による弓矢による伝統的狩猟が今でも認められている。サン族は、大きな弓で1発で仕留めるのでなく、毒を塗った小さな弓矢を使う独自の方法をあみ出した。獲物に矢を当てた後、長時間あとを追う。虫や植物から毒を採る方法をダム君が紹介する © 岡部一明

毒となる部分を穴の中に落とし保存する

毒となる部分を穴の中に落とし保存する © 岡部一明

30分に縮めてもらった短縮版だ。本来ならその他、乾季の水の探し方、火の起こし方、足跡などから動物を探す方法、時には実際の狩猟をいっしょに体験したりするという。ブッシュ生活の専門家、その誇りをもってブッシュマンと自称することもあるが、今はサンだという。サンの中でもこの辺はジュホアンシ(Ju/Hoansi)という部族が中心となる

30分に縮めてもらった短縮版だ。本来ならその他、乾季の水の探し方、火の起こし方、足跡などから動物を探す方法、時には実際の狩猟をいっしょに体験したりするという。ブッシュ生活の専門家、その誇りをもってブッシュマンと自称することもあるが、今はサンだという。サンの中でもこの辺はジュホアンシ(Ju/Hoansi)という部族が中心となる © 岡部一明

リビング博物館入り口付近の土産物店。村人のつくった素朴な民芸品が並んでいる。売り上げはその製作者に行くそうだ

リビング博物館入り口付近の土産物店。村人のつくった素朴な民芸品が並んでいる。売り上げはその製作者に行くそうだ © 岡部一明

エーイ、僕らはブッシュに棲む誇り高きサン族だぞ。通訳のキャオ君(右)とダム君

エーイ、僕らはブッシュに棲む誇り高きサン族だぞ。通訳のキャオ君(右)とダム君 © 岡部一明

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