「地球号の危機ニュースレター」524号(2024年2月号)を発行しました。

風力発電で競い合う1道2県 洋上風力計画で北海道有利か

建設中の石狩湾新港洋上風力発電所 © 井田均

建設中の石狩湾新港洋上風力発電所 © 井田均

井田 均(市民エネルギー研究所)

 前作、「北海道北部で風力発電が急増」では、現在北海道北部と石狩湾に建設中の発電風車群が、2年後には現在(2022年末)県別トップの青森県と2位の秋田県を抜き去り首位に躍り出るという見通しを述べた。

 その後調べてみると、今後の風力発電拡大の主戦場は洋上に移ることが明らかになった。青森県と秋田県にも洋上風力発電の建設計画はある。しかし北海道の南西部の石狩湾から渡島半島の西に広がる日本海に至る海域に計画されている洋上風力発電の建設プランは、その規模において圧倒的だ。将来的にはこの洋上風力発電の建設計画が、北海道を全国の都道府県でトップの座をゆるぎないものにするのは間違いない、との確信に至った。

2022年末は青森県がトップ

 現時点(最新の集計は2022年末)で都道府県別の風力発電の発電能力は、トップが青森県で73万9000kW、2位が秋田県の73万3000kW、3位が北海道で、1位と2位に大きく水を空けられた51万kWだった。

しかし2023年が始まると、北海道が急成長を見せ始める。陸上では、北部の8つの新設風力発電所が、2年後へ向けて次々に建設が進む一方、石狩湾の洋上に建設中だった大型の洋上風力発電も年内に完成。3位の北海道がトップの座を狙う追撃態勢が整ったと言えそうだ。

 さらに今後の風車建設改革を見ると。主力は洋上に向かっている事が分かる。もはやせいぜい10万kW程度の規模しか建設出来ない陸上と異なり、洋上にはその10倍から30倍の300万kWクラスが容易に建設出来るからだ。

 2022年末に風力発電のトップ3だった青森県、秋田県、北海道の順に洋上風力発電の建設計画を見て行こう。

2022年12月末時点の導入量(都道府県別) 風車発電導入料と風車基数

青森県の洋上風力は528万4000kWに

 青森県の西にある津軽半島。その北西部に中泊町がある。西に突き出た小泊岬の北側と南側に、中泊町と日本風力開発が10万kWというやや小規模の「中泊町沖合洋上風力発電所」の建設計画を進めている。

青森県の洋上風力発電建設計画
青森県の洋上風力発電建設計画 © 大竹財団
発電所名建設事業者発電能力 (万Kw)
①中泊町沖合洋上風力発電所町と日本風力開発10
②つがる西洋上風力発電所日本風力開発100
③陸奥湾洋上風力発電所日本風力開発、青森風力開発30.4
④青森沖洋上風力発電所日本風力エネルギー130
⑤青森県西北沖洋上風力発電所日立造船、エコ・パワー50
⑥つがる洋上風力発電所グリーンパワーインベストメント48
⑦青森県つがる沖南部風力発電所JERA60
⑧つがる西洋上風力発電所日本風力開発100
 合計  528.4

 そこから40kmほど南下した車力村から鯵ヶ沢町に至る海域には、多くの洋上風力発電所の建設計画がある。まず日本風力開発が進める100万kWの「つがる西洋上風力発電所」。次に日本風力エネルギーが建設する130万kWの「青森沖洋上風力発電所」。日立造船とエコ・パワーが計画している50万kWの「青森県西北沖洋上風力発電所」。グリーンパワーインベストメントが計画している「つがる洋上風力発電所」は48万kWだ。JERAが建設を考えているのは、60万kWの「青森県つがる沖南部風力発電所」。日本風力開発はさらにこの海域だけでも3つめの事業、「つがる西洋上風力発電所」、100kWを計画している。

 さらに陸奥湾にも日本風力開発と青森風力発電が計画している30万4000kWの「陸奥湾洋上風力発電所」がある。

 日本風力開発は、ここ青森県だけでも4つも洋上風力発電所の建設改革を進めている。日本風力開発の担当者は、特に陸奥湾洋上風力発電所に関して「陸奥湾洋上風力発電事業は、国の洋上公募の対象になっており、まずは国の方での『促進区域』に選ばれる事が必要です。現状ではその促進区域に選ばれるのがいつになるかが明確でないため、こちらとしてもいつ頃運転開始できるなどのスケジュール感はわからない」と言っている。

 これら青森県の洋上に計画されている海上風力発電所の建設計画の発電量の総計は、528万4000kWになる。何と2022年末の73万9000kWの7倍以上の建設計画があるのだ。

秋田県の洋上計画は今後182万2800kW

 2022年末に73万3000kWと県別で2位だった秋田県は昨年の2022年12月に能代港に8万4000kWを、今年に入った1月に秋田港に5万4600kWの洋上風力発電所を完成・稼働を開始している。

 今後の建設計画を見ると、まず2028年12月に三菱グループが、能代市・三種町・男鹿市沖海域に「能代市・三種町・男鹿市沖洋上風力発電所」47万8800kWを完成・稼働を始める。

 「八峰町・能代市沖洋上風力発電所」は35万6000kWの計画で、2021年9月に洋上風力発電所を優先的に整備する「促進区域」に指定されている。これまでに住友商事、日本風力開発、JERAなど6事業体が参加を表明している。

 「男鹿市・潟上町・秋田市洋上風力発電所」は31万5000kWの計画。建設事業者は、JERA、電源開発、伊藤忠商事、東北電力。

  「由利本荘市沖洋上風力発電所」は先の「能代市・三種町・男鹿市沖洋上風力発電所」と同じく三菱グループが、2021年実施の「第一ラウンド」で発電開始時期を他社より2年程度遅らせることで低い価格で応札したもの。81万9000kWで2030年12月の稼働開始の予定だ。

 これら秋田県沖の海域に建設が予定されている洋上風力発電所群の発電能力の合計は182万2800kWとなる。

 2022年末の73万3000kWの2倍半近い建設計画だ。

秋田県の洋上風力発電建設計画 © 大竹財団
秋田県の洋上風力発電建設計画 © 大竹財団
発電所名発電能力 (万Kw)発電開始年月
①能代港洋上風力発電所8.4既設2022年12月
②秋田港洋上風力発電所5.46既設2023年1月
③能代市・三種町・男鹿市沖洋上風力発電所 ※47.88計画2028年12月
④八峰町・能代市沖洋上風力発電所31.5計画未定
⑤男鹿市・潟上町・秋田市沖洋上風力発電所21計画未定
⑥由利本荘市沖洋上風力幡電所 ※81.9計画2030年12月
合計 182.28
※ 2021年実施の「第一ラウンド」で三菱グループが発電開始時期を他社より何年か遅らせることで、低価格を提示し落札したもの。

北海道は南西部に集中

 北海道の洋上風力発電所建設計画は広大な地域のうち、南西部だけがターゲットになっているようだ。石狩市が北限でそこから海岸沿いに西へ向かい、小樽市を通り、島牧村当たりから南下し、豊島半島沿いに上の町に到る。広い広い北海道のほんの一部の海域に洋上風力発電所が集中する。

 これはもちろんこの海域が強風であることが最大の理由だ。あとこの海域が遠浅で着床型の洋上風力発電が建設しやすいことにも注目すべきだろう。

 まずこの海域に洋上風力発電の建設に着手したのはグリーンパワーインベストメントだ。この会社はここ石狩湾に洋上風車を建設するために「グリーンパワー石狩」という会社を創設し、2020年から先行工事に着手した。筆者は2023年に8月から9月にかけて現地を訪れた。その時は1基8000kWの風車を14基建設する計画のうちちょうど8基目を海上に立てている段階だった。

 グリーンパワーインベストメントは2019年に事業計画の認定を受け、FIT単価1kWh当たり36円という高い価格での売電する権利を確保している。

 予定では今年、2023年の12月に完成・売電開始を狙っている。発電規模は9万9000kW。

 石狩市から小樽市へ至る海域には多くの発電事業者が建設計画を持っている。いずれも発電開始時期は未定だが、石狩湾洋上風力発電が建設する133万kWと103万3000kWの計画。グリーンパワーインベストメント96万kWの計画。日本風力開発の300万kW。関西電力の178万5000kW。JERAの52万kW。丸紅の100万kW。コスモエコパワーの100万kW。シーアイ北海道の100万kW。ここまでが石狩湾から小樽市へ至る海域に計画されている分だ。

 さらに日本海側の海岸線を南西に進むと島牧村に至る。この沿岸にも3つの洋上風力発電の計画がある。

北海道の洋上風力発電建設計画 © 大竹財団
北海道の洋上風力発電建設計画 © 大竹財団
建設事業者建設海域発電規模 (万kW)発電開始時期
①グリーンパワー石狩 ※石狩湾新港内9.92023年12月
②石狩湾洋上風力発電 ※石狩市と小樽市の沖合133未定
③石狩湾洋上風力発電 ※石狩市と小樽市の沖合103.3未定
④グリンパワーインベストメント石狩湾内96未定
⑤日本風力開発石狩市と小樽市の沖合300未定
⑥関西電力石狩市沖合178.5未定
⑦JERA石狩市と小樽市の沖合52未定
⑧丸紅石狩市と小樽市の沖合100未定
⑨コスモエコパワー石狩市と小樽市の沖合100未定
⑩シーアイ北海道 ※石狩湾沖100未定
⑪北海道洋上風力開発 ※島牧村の沖合58.5未定
⑫コスモエコパワー島牧村の沖合100未定
⑬日本風力エネルギー島牧村の沖合60未定
⑭電源開発せたな町〜上ノ国町沿岸72.2未定
合計 1463.4
※ 社名には前か後ろに「合同会社」が付く

 まず北海道洋上風力開発がプランニングしている58万5000kW。次にコスモエコパワーの100万kWの計画。最後は日本風力エネルギーの60万kWだ。

 北海道で最南端の洋上風力発電の計画は、電源開発の72万2000kWだ。せたな町から上ノ町に至る沿岸海域に計画されている。

これらを合計した北海道全体の洋上風力発電の総発電能力は、何と1463万4000kWにもなる。

 2022年末の1道2県の風力発電の発電能力は1位の青森県が73万9000kW、2位の秋田県が73万3000kW、3位の北海道は51万kWだった。

 これに北海道は1463万4000kW、青森県は528万4000kW、秋田県は182万2800kWが加わる。圧倒的な増加傾向である。

 さらに言えば、これは洋上風力だけに限定した話である。何年か後の今後は恐らく洋上風車が風力発電増加の主力になることはほぼ間違いないが、陸上にも多少は建設されるだろう。

 日本の風力発電の未来に明るい光が射してきた、と言ったら言い過ぎだろうか。

井田 均(市民エネルギー研究所)

『地球号の危機ニュースレター』
No.522(2023年12月号)