「地球号の危機ニュースレター」536号(2025年5月号)を発行しました。

どんぶらこ取材こぼれ話 第77回 不断の努力つづく上関町周辺〜「地元」の線引きをめぐって〜

竈八幡宮から望む上関海峡

竈八幡宮から望む上関海峡©山秋真

山秋 真

 やや前のことになりますが、それでもやっぱりここでお伝えしておきたいと思うことが、この2月にありました。山口県上関町の周辺自治体のひとつである田布施(たぶせ)町で、任期満了にともなって実施された町議会議員選挙のことです。

 定数12の議席をめぐり、現職10人、元職1人、新人3人という14人が立候補し、2月2日に投開票がおこなわれています。あらたに選出された議員の顔ぶれを見ると、特筆すべきことが3点ありました。

 まず、中国電力と関西電力が上関町に計画する、原発の「使用済み核燃料」を「一時保管」する「中間貯蔵施設」———いわゆる「核のゴミ捨て場」———の建設計画について「反対」を掲げた候補6人が、全員当選したこと。

 さらに、それによって、この計画に賛成する議員と反対する議員は、同数となったこと。改選前は前者8名、後者4人だったというから、賛成する現職候補のうち2人が落選したわけです。

 また、得票数は、この計画への反対を表明した新人の女性候補が820票を得てトップ———2位との差は200票以上と抜きんでています———だったうえ、同じく「反対」を表明した候補は大半が上位で当選していることです(下位当選はいずれも「賛成」の立場の候補者でした)。

 これを受けて「上関原発建設計画に反対する2市4町議会議員連盟」の中川隆志会長は、同じ日に声明を発表しました。「田布施町の民意は中間貯蔵施設建設反対を強く打ち出し」たとし、「上関町をはじめ山口県知事、近隣の市町の首長に対して、この結果を真摯に受け止め、直ちに中間貯蔵施設建設に反対の意を表明するよう強く求め」たのです。

 その後、「反対」する立場の田布施町議6人は、議会としてこの中間貯蔵施設の建設計画に反対する決議案を、2月28日に議長へ提出。田布施町議会3月定例会で、議長を除く11人の議員で採決が行われ、賛成6、反対5で可決されたと報じられました。

 山口県内の議会としては初めての、反対の意思表明ではないでしょうか。ちなみに、中国電力や国に対して中間貯蔵施設に関する説明を求める決議案も、やはり賛成6、反対5で可決されたということです。

 昨年11月には、同じく上関町の周辺自治体である柳井市の、平郡(へいぐん)島の連合自治会長などが山口県庁を訪れ、この中間貯蔵施設の建設計画に反対する考えを表明するよう、村岡嗣政知事に求める要望書を提出しています。背景として、昨年5月から11月に平郡島の連合自治会が、柳井市内に300強ある自治会のうち161の自治会の協力を得てこの中間貯蔵施設の建設に関するアンケートをそれら自治会の住民に対して実施したところ、3991件の回答が寄せられ、うち72%は計画への「反対」を表明していたことなどがあると伝えられています。

 上関町の周辺自治体から、「地元」の線引きをめぐる声がフツフツと沸きあがっているかのよう。耳をそばだてていたい、季節の変わり目かもしれません。

 

山秋 真

『地球号の危機ニュースレター』
No.536(2025年5月号)