山秋 真
第50回衆議院議員選挙の投開票が10月27日におこなわれました。今年1月1日の大地震も大変だったけれど、その復興がやっと進展を見せはじめていた矢先の9月、今度は記録的な大豪雨におそわれた能登半島の突端では、「地震も大変だったけど、豪雨の影響はもっとヒドイ」という声が聞こえるなかでの選挙です。
特に年に一度の収穫を秋に迎える作物をつくっておられる農家の方々にとっては、豪雨による土砂災害などで畑への道が寸断されたため収穫は叶わなくなり、これまでの労働が無に帰すばかりか、それを救済する法制度も見当たらないと聞きました。おのずと湧き起こる無念さや怒りに接して、今この時期に解散・総選挙などやっている場合だったのだろうかという政権への憤りを、私も禁じえませんでした。
その能登半島の先端地域にあたる石川3区では、15年ぶりに選挙区の議席を奪い返した立憲民主党の近藤和也候補の当確が早々に報じられ、4回目の当選を果たしました。逆にいうと、自民党が石川県内の3議席を独占する状態が15年ぶりに崩れたわけです。
大震災と大豪雨という二重の自然災害を、短期間につづけて被った人びとは、置き去りにされたまま強行されたこの選挙で、明確に意思を示したのだと思います。
いっぽう、40年以上前から原発の新設計画をかかえ、昨夏からは原発の使用済み核燃料の中間貯蔵施設の建設計画まで浮上している上関町をふくむ山口2区では、自民党の前職・岸信千世候補と立憲民主党の平岡秀夫候補が横一線で競りあいました。
昨年4月の衆院補欠選挙に立候補し、周囲の予想以上に激しく競った両候補。1年半を経て再度の大激突です。
日付がかわっても結果はなかなか出ません。25時をまわってようやく、岸候補の当確が報じられました。その獲得票数は104,885。
103,161票を得た平岡候補との差は、わずか1724票でした。となると無効票の内訳など気になるところですが、それに関する報道には私はまだ接していません。
小選挙区では当選を逃した平岡候補ですが、比例代表で当選を果たしています。その平岡さんは今回、光市や柳井市、熊毛郡などで得票率が伸びたことについて、「上関町の(使用済み核燃料の)中間貯蔵施設の計画に明確に反対したことが大きかったのでは」と分析したと報じられました。国論の争点にゆれる地域の声を受けて12年ぶりにもどる国会で、法務大臣をつとめた経験も生かして大いに活躍することが期待されます。
なぜなら上関町にとって、いま能登半島でおきている状況の多くは文字どおり他人事でないと私には思えるから。歴史学者の網野善彦さんが著書で指摘しているとおり、能登半島(特に日本海側)と上関には共通点が多く、とりわけ地形はよく似ています。
上関でひとたび大規模な自然災害が起きたなら、能登半島で起きているのと同じような事態に見舞われる可能性が十分にある。そう案じずにいられないのは私だけでしょうか。
山秋 真
『地球号の危機ニュースレター』
No.533(2024年11月号)