「地球号の危機ニュースレター」544号(2026年6月号)を発行しました。

里山資源利活用税を考える③

東近江市三方よし商品券 © 中川修治

東近江市三方よし商品券 © 中川修治

中川 修治

(前回、里山資源利活用税を考える②の続き)

―今までのパラダイムが転換できていないと。厚生労働省は地域共生社会が必要と言いますが、地域共生社会の原資は国保料や介護保険料です。そこに住む人たちから税金や利用料を徴収してシステムを回しています。言ってみたら自分で自分の足を食べている。本当の意味でそれを支える生産基盤が紐づいていない。

中川 支えていく経済になっていないですね。生産基盤を地域社会に紐づけるのであれば、生み出された富は域外に持ち出してはいけない、遠くに運べば運ぶほど減っていく資源だとしなければならないのです。

―例えば、若狭湾や黒部で発電した電力を大阪まで高圧線で持っていくと、電力は減ってしまいますし費用も掛かる。発電をするのであればエネルギーが生まれた場所で消費するのが一番効率が良いわけですが、そうじゃない状況で不経済が生じている。だからこそ、地域で生み出されたエネルギーを地域の中で回していく経済に作り変えていかなければならない。その原資が里山資源利活用税ということですね。

中川 市民共同発電所を作ったところから、エネルギーと人間と社会のかかわりをずっと考え続けてきました。構造的で歴史的なものとの対立構造の違和感を考えると、おじいちゃんおばあちゃんが作ってくれた共同発電所が地域で私たちの命を支える形になれば、実はこれを年金原資にすることもできたわけです。

先祖が開墾した田んぼが生産をしてくれるように市民共同発電の生み出す富が地域の中を回ると。

中川 そういう地域を支える地産地消型の自立する経済が本来のあり方でしたが、みんな表面的に太陽光パネルさえ増えればいいとなっている。その逆の側も原発でさえなければ何でもいいっていう「モノのレベルの発想」にみんな留まっている。

原発が是か非かではなくて、地域の中でみんなの生産財を使って富を生産して地域経済を回していこうと。

中川 域外に流出しているお金の流れを税で止めて、自分たちの地域に再投資をして、自立できる社会になるのはすごく大事なんです。今私たちが動いているのはアラブの石油のおかげですが、ホルムズ海峡が止められたらどうするんだとなる。

市民共同発電所と対極にあるのはメガソーラーです。メガソーラーは、地方が疲弊して放棄した山林や田畑を都市資本が開発をして、巨大なパネルを大量に貼り合わせて、そこからまた富を都会に収奪していくという流れになっている。

中川 ヒト、モノ、カネが地方から中央に吸い上げられて、最後に持ち出せなかった再生可能エネルギーも、設備投資が富を生み出すということで確かに間違ってはいないが、FITを通して都市資本がそのまま持って行ってしまった。

お金に変換することによってですね。

中川 でも、生み出されたお金の価値を支えているのがエネルギーだという考え方もあるんです。どこで生み出されたエネルギーかと考えたら、宮崎の国富町とか湖南市という地元に太陽エネルギーが降り注いで生み出されている。なんで大都市が富を持って行くんですか。

 生み出された富は江戸時代の石高と同じなんです。その上に文明が築かれます。発電イコール生産能力がありますが、能力があっても太陽が当たらなきゃ何も生み出さないわけです。生み出されることによって、人間の文明圏の中に新たに低エントロピーのエネルギーを入れてきて、私たちの生活を支えて、経済が動いてきたんです。

だからこそ、その富を域外に持ち出させず地域の中に留めおき循環させ、地域をよりよくするために使っていくための税制を地方発の声で作っていかなきゃならないということですね。

中川 日本全体に適用されるのが国の法律ですが、自分たちの地域に限定して決める条例があります。条例は地方自治、私たちの身近な社会を作っていくわけですから、むしろ国の法律よりも根幹なのかもしれません。

補完性の原則を強調するのであれば、自治立法、そして自主課税ということをしっかり考えていかなければならないといけないと。

地方税制と自主課税の未来

中川 産業革命以降、化石エネルギーをベースに富を生み出す仕組みは、都市の資本がヒト、モノ、カネを全部動員して大きくなることで初めて成り立ちました。その結果、明治維新以来、中央から地方へ所得の再分配をすることが政治の「仕事」になってしまいました。

 今、そのエネルギーシステムと経済構造では、地球と人間との関係が持たないということがわかってきました。私たちは希薄だけれども誰もが参加できる再生可能エネルギーに新たに参加をし始めました。それなのに、無理やりメガソーラーをつくって生産の現場から人々を遠ざけていることは問題です。太陽光発電換算で一人2kWから10kWとか、自分の使う分のエネルギーをつくるために共同で参加し、一緒に価値を生み出す主体になるならメガソーラーでもいいと思いますが、それでも東京都民全部では無理ですよね。

 そこで、宮崎は太陽の条件がいいからぜひ参加したいって都民が思ったときに、生み出された富は宮崎の国富町の通貨で払います。それを東京へ持っていくと5分の1ぐらいに減るかもしれないとする。そういうお金は地方で回さないと、貯めていても経済は動かないので、時間が立ったら価値が減るようにもする。そうすると、都民も地方へ行って次の新たな時代を一緒に作るようになる。地方で生まれた富は持ち出すと減る、貯めると減る。お金を地域通貨にして地元でしか使えず腐らせるようにする。地方の自立のためには、地方に帰属する資源や富は距離減価、時間減価させるという考え方が重要です。

 地方への移住には、補助金を出すのではなく、ここに来たら自立できるための仕組みを一緒に作ることができるというメッセージを発信することがすごく大事だと思います。

―関係人口づくりから始まっても、そのうち本気になって骨を埋めてその地域を良くしようという人が出てきますね。

中川 地方の首長さんが、東京に行って予算と金を取ってこなきゃ何とかならないというのではなく、自分たちの持っている資源をどう生かし、どう効率的に自立ができるかを一生懸命考えるいい機会なんです。

―まずはその地域にある資源で収入を上げると。

中川 それが大事だと言ったのは二宮尊徳さんです。彼はまちおこしをするとき、朝早く起きて、町の中でどんなふうに経済とか人々が価値を見出しているかをまず見るということから始められた。

―自ら体を動かして開墾して、いろいろなものを植えて、それが地域の経済に移行していくと。

中川 地方の生産力が上がってくるということだったんですよ。

―最近は経済産業省のリーサスで「地域経済循図」が見られます。どれだけ域外から物を買っているのか、域外に富が流出しているのかという計算ができるようになっています。その中で生み出された富のうち設備投資に相当する部分は域外に持って行かれても仕方がないけど、里山資源を利用して生産分は地元にちゃんと帰属させてくださいよと。

中川 外部資本が富を全部域外に持って行くなという当たり前の話です。それはその土地に対して不敬罪に当たるような話だと思います。そこに住む理由の一つが、そこで自分たちが自立することができる可能性なんです。制度設計の失敗である旧来の大規模収奪型のメガソーラーを見直して、地方が自立する経済を子どもに見せていく。私たちはあなたたちの子どもや孫を含めて次の世代に対してちゃんとした地域社会を残すためにやっているんだから、税で協力をしていただいてもいいんじゃないですかとね。

現在の電力システム

現在の電力システム © 中川修治

未来の電力供給システム構想

未来の電力供給システム構想 © 中川修治

―これを読んでいただいた首長が課税自主権を本気で考えたいと思ったら、まず何から始めるといいのでしょうか。

中川 法定外目的税にするというのは、課税自主権上は一番入りやすい。議員さんと首長さんだけじゃなくて、そういうことに関心を持つ住民が直接参加する委員会を作って、どんな成果を生み出したのか、失敗したらなぜなのかというフィードバックをかけながら、課税自主権を含めて自分たちがどんな仕組みを作ろうかと議論を始めることが必要だと思います。

―税制審議会というものを設けて住民を交えて議論することは大事ですね。

中川 すごく大事だと思う。実はこのサービスはこんなふうに支えられているんですという話をわかってもらうと、なるほどそれなら納得できるなと。皆さん納得をして自分たちの社会で生きていきたいと思ってらっしゃるわけですよ。

 高度経済成長期を支えたうちの親父が言っていたのは、「生きている間に元が取れる」という発想の人がものすごく多いなと。しかし、それを支えていたのは化石エネルギーです。それに対して、自分たちの時代が食うことも含めて、将来の世代のために田んぼを開墾し、社会を豊かにし、それを祭りとして伝えてきた先祖は、すごく大事なことをしていたと思います。

―地方創生の根幹であるモノからコトへという流れあるいは関係人口から人口の移住定住につなげるということですね。

中川 その地方に来る人数が増えれば良いということではなくて、そこで幸福に暮らして、次の世代を育んでいけるというところまで行かないと本物じゃないですよね。地方創生をやっていたら何か人間が増えていましたねという話ではない。

―住民の数を増やすというKPI(中間目標)を設けるのではなくて、住民の幸福度を上げていくことを目的にすることが大事だということですね。里山資源利活用税は太陽エネルギーが降り注いだ里山の潜在的付加価値に課税するということですが、課税客体というのは何になるんでしょう。

中川 課税主体は地方自治体です。設備は所有権を持っている人に帰属しますが、域外から持ってきた設備を所有していたとしても、太陽光発電施設も風力発電施設も、それ自体はあくまでエネルギーを顕在化させるための装置であって、それが富を生み出しているわけじゃないんです。本当に価値を生み出しているのはそこに降り注いでいる太陽のエネルギーなんです。だから成果評価型にしなきゃいけません。

 今、岡山の美作市などの税はパネルのように置いておくだけでは何も価値を生み出さないものに掛けているんですが、それに掛けるのは筋が違います。成果を生み出すのは太陽エネルギーですから、kWではなくてkWhに税を掛けるという発想になってきます。課税客体は生み出された富から設備投資分を差し引いたものになります。

 それと、気を付けないといけないのは、今の日本の税制とか補助金は単年度なんです。社会のパラダイムが長期にわたって変わっていくのであれば、単年度の予算でやることはあまり向いてないかもしれない。だったら、とりあえず固定価格買取制度は20年のうちあと10年ぐらい残っていたりするので、ここからずっと生み出されていくエネルギーが地方自立のための原資になるとすると、何年後にはこれぐらい収入があるというように予測可能になります。だったら、それを単年度で全部食いつぶすのではなくて、長期にわたって生産財の生産力としてどう社会に使っていくのか、そこに課税客体を見出すことが考えられます。

中川 修治

『地球号の危機ニュースレター』
No.544(2026年6月号)

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