日韓フェリーで渡韓
フェリーは12時30分に発船の予定だ。
40分前に乗船した時には、他の乗客たちでほとんどの椅子は埋まっていた。韓国人の母親とその息子が座っていたテーブルに空きがあったので、挨拶して座らせてもらった。やがて出航。しばらくは九州本土と島々が見えたが、それも見えなくなり、外洋へ出る。
以前訪れたことがある対馬が見えないだろうか、と気にしていたが、あるいは見えたのかも知れないが確信は持てなかった。
腹が減ったので食堂へ行った。キムチ汁定食1000円しかなかった。辛い物は苦手だが、他に選択の余地がないので仕方ない。注文した。
17時過ぎ。外は霧でほとんど何も見えない。18時半ごろ、韓国・釜山港に入港した。
翌日はバスで木浦へ
翌朝は7時に起きた。旅行も4日目になると早起きが苦痛でなくなる。前日に泊まったホテルを出て地下鉄を乗り換え釜山西部バスターミナルに到着した。バスは4、5時間で韓国南西部の町、木浦に着いた。
この木浦から十数km南にソラシド太陽光発電所がある。韓国最大の98.397MWを誇る大規模太陽光発電所で、明日はここを訪れるつもりだ。
ソラシド太陽光発電所へ
翌朝は9時に起き10時ごろ呼んだタクシーに「ソラシド太陽光発電所へ」と言うとすぐに納得。ここら辺ではかなり有名だと推測した。
タクシーは2つの大きな橋を渡り、木浦市がある半島から南の半島へ。さらにその南の半島へと移動した。最後の橋を渡った所でタクシーは停車した。「違うよ。ここからもっと東へ行かないとソラシド太陽光発電所に行けない」
言っても運転手はモゴモゴ韓国語で何かを言っているだけだ。やや焦る。そこへタクシーの外に男性が歩いているのが見え、運転手はその人に話しかけた。これも韓国語だった。運転手は私に「彼の車に乗って欲しい」と言う。半信半疑それに従った。後の自己紹介によると、彼の名は、Son Sang Yong氏といい、このソラシド太陽光発電所を建設した韓国南部発電の社員だ。
助手席に座ると彼は車をスタートさせた。彼は前日まで日本にいたという。北海道の旭岳と黒岳に登山したと言った。私は登山家ではないが、若い時この2つの山には登った事があったので話は弾んだ。
しばらく走ると視界が開け、左前方のやや低い位置に広大な太陽光発電施設が展開しているのが見えた。車を停止してもらい写真を撮った。
車は少し低い位置にある太陽光発電施設の方に進んでいく。広がるパネル群の間には所々に樹木群が植えられている。「売電期間が終わる20年後を見据えて緑化しているのです」とSon Sang Yong氏。
向こうに10m程の高さの塔が見える。車はその方向へ進んで行った。どうやらその塔は、登って辺りを見る見晴らし台のようなもののようだ。着いたので車を降りた。彼が先導する。ゆるやかにカーブしながら登っている階段を登り始める。長い間誰も登っていなかったようで、階段の途中にはクモが糸をはっていた。それがある度にSon Sang Yong氏は手でそれを払ってくれた。
一番高い地点からは太陽光発電所の全貌が見渡せた。
「このソラシド太陽光発電所は我が国最大、98.397MWの太陽光発電所です。土地は165haあります。3440億ウォン(建設時のレートで約306憶円)を投じた韓国南部発電によって4年前の2020年3月の末に建設されました。売電価格は1kWh当たり353ウォンです。1日に日本円だと2000万円分の電力を発電しています。この広大な土地は、以前は海でした。そこを埋め立てたのです」。彼の説明だ。
彼が売電価格だと言った353ウォンというのは、日本円に換算すると約40円に相当するかなりの高水準だ。韓国政府の太陽光発電を普及拡大しようという強い意欲が私には感じられた。
韓国の新聞、朝鮮日報の2020年4月7日付けの報道によると、ソラシド太陽光発電所は2020年3月27日に商業運転を開始している。売電期間は20年なので2040年3月26日までは売電を続けることが出来る。土地の緑化はその後のことを考えての事だという先の説明に納得した。
彼が運転する車は、やがてさっきの駐車場に戻った。お礼を言い握手をして別れた。待っていたタクシーに乗って木浦のホテルに帰った。
翌朝バスターミナルからソウル行きのバスに乗った。市内のホテルに1泊後、翌日はソウル駅までタクシーで行き、ソウル駅から仁川国際空港には快速列車で到着した。仁川国際空港から成田国際空港までわずか2時間25分で着いてしまった。
行きは3日掛かりだったのが、帰りは2時間25分。多くの人が航空便を使うのも分からないでもないと思った。
井田 均(市民エネルギー研究所)
『地球号の危機ニュースレター』
No.533(2024年11月号)