「地球号の危機ニュースレター」529号(2024年7月号)を発行しました。

真夏じゃないのに真夏

© 湯木恵美

湯木 恵美

 今日は、6月の半ばですが、まるで真夏のようです。空は、真っ青で、光が強い。 地面には、影が濃く写っています。 やっぱりこれは真夏の太陽としか思えない。

 それでも用事があって、1時間ほど外で作業をしたら、文字通りゆでだこのようになりました。 暑い。 こんなに暑くて大丈夫かな?地球。 心配になってしまいます。   

 そんなことを思いながら出かけた先日、あちこちからLINEがありました。私の地域が、雷とともに土砂降りで、物凄い雹が降ったと。 その時、私は自宅からわずか4キロほど離れたところにいたのですが、そんな異変は全くなく、暑い暑いと晴れた空を眺めてばかりいたものですから、想像すらつきませんでした。

  自宅に戻ると、桃の木のまわりはまだ白く、春先の名残り雪の様でした。また、一瞬、父が肥料を撒いたのかな?なんで亡くなった父親の姿が浮かび、立ちすくんでしまいました。 いつもひとりで作業することが好きで、黙々とやっていた父親。それと同時に今は、雪の残る春先だったっけ?と思いが交錯しました。それくらい目に入る景色と季節を脳が処理出来ない一瞬でした。

© 湯木恵美

  昨年は、あまりに暖かい春が驚くほど早く花を咲かせ、再び標準の季節に戻った時に霜が降り、季節を急いだピンク色の畑は、一瞬にして茶色くなりました。そうなると実にならない。収穫はわずかでした。 そして今年は雹。 実を守る葉はことごとく穴があき、それは膨らみ始めた桃の実にも同じ事が起きていました。 

  自然を相手に行う作業の難しさをしみじみ思いました。両親から引き継いだ私ですが、大幅に量を減らして、お世話になった方や、ご近所へのお裾分け程度にやっている桃造りです。しかし本業の桃農家さんのことを思うと、どれほどの苦労があるか知っているだけに気持ちが萎えます。この雹がもたらした被害は桃ばかりではなく、果物全般、更に、出荷間際だったレタス農家はタイムリーに打撃を受けたそうです。 柔らかさが売り物のレタスは、穴だらけで無残なものでした。 地球温暖化のせいなのか、何が原因かわかりませんが、あきらかに、自然が変わりつつある今、自然相手の仕事はどうしていったら良いのかと考えさせられた出来事でした。

 今回の被害にあったレタスが売られている直売所のニュースが報道されていて、私は早速行ってきました。「雹被害に遭い、穴だらけです。10円引き」と販売している直売所を見つけてその逞しさになんだか少し嬉しくなりました。 ひとつ購入させていただき食べてみると、味は全く変わりはありません。見た目だけです。 

  私は思いました。ほんとに単純なことです。 自然の中で造る作物は、こんなふうに世の中が受け入れてくれれば、苦労しても実を結ばず、諦め辞めていく事もせずに、自然にも対抗できるんじゃないかなと。なんでも企画通り、形の良いもの、ミスのないもの、そんなことわかり求めていたら、なんだか危ないものになってしまいそうな気もしました。

 きっと地球も嫌がらせや悪ふざけをしているわけではなく、いっぱいいっぱいで苦しいんだろうなと思いつつ、今日も真っ青な空を眺めています。

© 湯木恵美

湯木恵美

『地球号の危機ニュースレター』
No.529(2024年7月号)