「地球号の危機ニュースレター」527号(2024年5月号)を発行しました。

(東欧便り)中央アジアにつながるトルコ

ボスポラス海峡からのイスタンブール。左端にビザンツ時代以来の大聖堂・モスクのアヤソフィア

ボスポラス海峡からのイスタンブール。左端にビザンツ時代以来の大聖堂・モスクのアヤソフィア ©岡部一明

テュルク系諸国とのつながり

 中国の抑圧下に居るウィグル族の多くもトルコに移住しており、その集住地区がある。他の中央アジア・コーカサス諸国、ロシア連邦圏少数民族も含めてトルコはテュルク系諸民族の拠り所になっているのか。特にイスタンブールはヨーロッパにも近い人口1500万もの大都会だ。ユーラシア大陸に広がるテュルク系諸民族にとってイスタンブールは、高度経済成長時代の東京のような存在になっているのかも知れない。

外国人受け入れ国としてのトルコ

 トルコはこれまでヨーロッパなどへの移民(外国人労働者)送り出し国とのみとらえられてきたが、一定の経済成長を踏まえ、外国人受け入れ国にもなりはじめている。トルコ人労働者受け入れ先ドイツの統計を見ると、2006年から、トルコからの入移民より出移民(永住のための帰国)の方が多くなった。 2014年の場合、22,058人がドイツ入りし、25,520人がトルコに帰国している。

 トルコの出入国統計でも2009年あたりから出移民より入移民の数が超過する。最近再び出移民が増えているが、これはトルコ人の出移民が増えたというより、難民その他で入ってきた外国人がヨーロッパを目指し出ていくケースが増えたということらしい。トルコはヨーロッパを目指す移民・難民が最初に足場をおく国でもある。2019年のトルコからの出移民330,289人のうち、トルコ市民は84,863人(26.7%)のみで、外国人が245,426人(73.3%)だった。

 純流入の増加によりトルコの外国生まれ人口は、2000年の128万人(総人口の2.03%)から2015年の296万人(同3.77%)に増加した。

 また、ビザ期間を超えて滞在する外国人に発給される居住許可数を見ると、2000年代に20万人前後で推移していたのが、2012年に30万人、2019年に100万人を超えた。その後一時コロナの影響で減るものの、2021年以降130万人台で推移している。最新の2023年3月16日現在は、1,339,738人だ。

 こうした人々の多くは大都市に居住し、その中でも特にイスタンブールには半数の695,281人(51.9%)が住む。2位はアンタルヤ150,843人(11.3%)、3位アンカラ86,579人(6.5%)だ。

テュルク系諸国からの流

 2023年3月16日現在の外国人居住許可数を国籍別で見ると、次の通り。

1ロシア 158,117
2イラク 123,891
3トルクメニスタン113,776
4シリア96,646
5イラン93,079
6アゼルバイジャン70,179
7ウズベキスタン58,520
8アフガニスタン51,433
9ウクライナ47,616
10カザフスタン46,251

 ロシア、イラク、イラン、ウクライナなど、現在の国際情勢を反映した避難民的入国者が上位を占める。しかし、トルクメニスタン、アゼルバイジャン、ウズベキスタン、カザフスタンなどテュルク系の国からの入国者も多い。

 内務省外国人国境亡命局のOECD向けの報告書を見ると、2012年の居住許可数として上位からジョージア(17,078人)、ロシア(16,045人)、アゼルバイジャン(14,943人)、ドイツ(14,555人)をあげた後、次のように言っている。  「かなりの居住許可がエスニックなトルコ系外国人に発給されている。その多くは、トルコに住む親戚、友人に会うため、あるいは一定期間の留学、就労のためトルコに来ている。内務省外国人国境亡命局の統計によると、こうしたエスニック・トルコ人には、ブルガリア系トルコ人、アゼルバイジャンやカザフスタンからのメスへティア・トルコ人(トルコ・ジョージア国境周辺を祖地とするトルコ人)などが含まれる。」(Turkey and International Migration, 2012-13, p.23)

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