「地球号の危機ニュースレター」532号(2024年10月号)を発行しました。

(東欧だより)風ふきわたるキシナウ〈モルドバ首都〉

モルドバの首都キシナウには緑が多い(人口70万)© 岡部一明

モルドバの首都キシナウには緑が多い(人口70万)© 岡部一明

マイクロバスがキシナウ北ターミナルから出る

 ウェブ上でいくら探してもソロカ行きのバスはなかった。国内交通のマイクロバスはウェブ上に情報を載せてないらしい。実際にバスターミナルに行って初めて、午前7時からほぼ1時間ごとにソロカ行きバスが出ていることがわかった。所要時間約3時間、料金105レウ(900円)。

 キシナウには中央、北、南の3つの長距離バスターミナルがあるが、ソロカ行きは北ターミナル(Gara de Nord)からだ。通常ならオデッサ、モスクワ、サンクトペテルベルク、キエフなどに向かう国際バスもここから出る。ソロカまで所要約3時間。なだらかにうねるモルドバ平原を北上。モルドバはもう風土的にはウクライナだ。ひまわり畑がたくさんあった。我々の世代としては、ウクライナを舞台にしたイタリアの反戦映画「ひまわり」(1970年)が記憶に残る。日本で最近またこれの上映運動が起こっていると聞いた。

キシナウ北バスターミナルの国際線発着所にはオデッサ行き(右)、モスクワ行き(左)、キエフ行き(写真外)、サンクトペテルベルク行き(写真外)などの掲示もあった。オデッサ行きとキエフ行きは運行しているようだが、モスクワ行きとサンクトぺテルブルク行きは運行休止の模様 © 岡部一明
キシナウ北バスターミナルの国際線発着所にはオデッサ行き(右)、モスクワ行き(左)、キエフ行き(写真外)、サンクトペテルベルク行き(写真外)などの掲示もあった。オデッサ行きとキエフ行きは運行しているようだが、モスクワ行きとサンクトぺテルブルク行きは運行休止の模様 © 岡部一明
途中、ひまわり畑をたくさん見た © 岡部一明
途中、ひまわり畑をたくさん見た © 岡部一明
同上 © 岡部一明
同上 © 岡部一明

ウクライナを舞台にしたイタリアの反戦映画「ひまわり」(1970年)

ウクライナの黒土地帯もすでに始まっているようだった。黒土(チェルノーゼム)は、腐植土が分厚く堆積した肥沃な土壌で「土の皇帝」とも呼ばれる。黒海北岸から中央アジアにかけて多く分布。ウクライナの高い穀物生産を可能にしている © 岡部一明
ウクライナの黒土地帯もすでに始まっているようだった。黒土(チェルノーゼム)は、腐植土が分厚く堆積した肥沃な土壌で「土の皇帝」とも呼ばれる。黒海北岸から中央アジアにかけて多く分布。ウクライナの高い穀物生産を可能にしている © 岡部一明

ドニエストル川に沿ったソロカの街

 ソロカのバスターミナルは市の南端にあった。ドニエストル川がすぐ近い。遊歩道に出ると、すぐ対岸がウクラナイナだ。川は音もなくゆっくり流れていた。ショーロホフ『静かなドン』を思い出す。大平原を流れる大河は皆こんなゆったりしているのだろう。ドニエストル川は、事実上の分離国家トランスニストリアの西端を流れ、ウクライナのオデッサ付近で黒海に注ぐ。(一方、さらなる大河ドン川は、ウクライナ東のロシア領を流れ、アゾフ海(つまり結局、黒海)にそそぐ。)

 南方の丘の上に「感謝のキャンドル」の塔が見えた。そこに登ると、ウクライナが見渡せそうだ、と見当をつけていた。

ソロカのバスターミナル近くを流れるドニエストル川。南方の高台に「感謝のキャンドル」の塔が見える © 岡部一明
ソロカのバスターミナル近くを流れるドニエストル川。南方の高台に「感謝のキャンドル」の塔が見える © 岡部一明
ドニエステル川河畔の丘に建つ「感謝のキャンドル」(The Candle of Gratitude)モニュメント。道路から約650段の階段を登った丘の上に立つ高さ29.5メートルの塔だ。モルドバの文化を守り続けてくれた人々への感謝を示すため2004年に建設された。塔の中はチャペルになっている。その(地上部分)外周が展望台で、ドニエステル川やウクライナ側が見える。家族連れの観光客も多く、私の行ったときには小学校の課外授業グループも来ていた © 岡部一明
ドニエステル川河畔の丘に建つ「感謝のキャンドル」(The Candle of Gratitude)モニュメント。道路から約650段の階段を登った丘の上に立つ高さ29.5メートルの塔だ。モルドバの文化を守り続けてくれた人々への感謝を示すため2004年に建設された。塔の中はチャペルになっている。その(地上部分)外周が展望台で、ドニエステル川やウクライナ側が見える。家族連れの観光客も多く、私の行ったときには小学校の課外授業グループも来ていた © 岡部一明
ドニエステル川をはさんでウクライナのチェキノブカの村、さらにかなたのウクライナ平原が見渡せる © 岡部一明
ドニエステル川をはさんでウクライナのチェキノブカの村、さらにかなたのウクライナ平原が見渡せる © 岡部一明
ドニエステル川の下流方向(南方向)。大きく蛇行しながら流れ、約15キロ行くと、左岸に、未承認分離国家トランスニストリア(正式名:沿ドニエストル・モルドバ共和国)の領域が始まる。ロシア系住民が多く、ロシア軍も駐留している © 岡部一明
ドニエステル川の下流方向(南方向)。大きく蛇行しながら流れ、約15キロ行くと、左岸に、未承認分離国家トランスニストリア(正式名:沿ドニエストル・モルドバ共和国)の領域が始まる。ロシア系住民が多く、ロシア軍も駐留している © 岡部一明
ソロカの観光目玉、ソロカ要塞。異民族からの攻撃からこの地を守ってきた要塞で、現在のものは1543年から1546年にかけ、モルダビア公国のPetru Rareş(シュテファン大公の息子)によって築かれた。円形の要塞4つと四角の要塞1つを組み合わせたユニークな形の中世建築。モルドバの象徴ともされ、モルドバ紙幣20レウ札の裏面にこのソロカ要塞が描かれている。要塞のすぐ右が遊歩道で、ドニエステル川越しにウクライナ領が見える © 岡部一明
ソロカの観光目玉、ソロカ要塞。異民族からの攻撃からこの地を守ってきた要塞で、現在のものは1543年から1546年にかけ、モルダビア公国のPetru Rareş(シュテファン大公の息子)によって築かれた。円形の要塞4つと四角の要塞1つを組み合わせたユニークな形の中世建築。モルドバの象徴ともされ、モルドバ紙幣20レウ札の裏面にこのソロカ要塞が描かれている。要塞のすぐ右が遊歩道で、ドニエステル川越しにウクライナ領が見える © 岡部一明
対岸の岸辺では牛たちが草をはんでいる。彼らは、そこが大変な戦争になっている国だなどということは、夢にも思っていないだろう © 岡部一明
対岸の岸辺では牛たちが草をはんでいる。彼らは、そこが大変な戦争になっている国だなどということは、夢にも思っていないだろう © 岡部一明

岡部一明

『地球号の危機ニュースレター』
No.523(2024年1月号)

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