「地球号の危機ニュースレター」548号(2026年10月号)を発行しました。

<検証>メガソーラーで露呈した日本の太陽光発電政策の失敗(1)

乱開発としか言いようのない谷をうめつくす京都府井手町のメガソーラー © 中川修治

乱開発としか言いようのない谷をうめつくす京都府井手町のメガソーラー © 中川修治

中川 修治

 昨今、太陽光発電はネガティブなイメージが定着してしまった。メガソーラーが全国各地でトラブルを引き起こしていることが一因。景観や環境破壊だけではない。再生可能エネルギーを増やすという大義名分のもとで始まったFIT(固定価格買取制度)は、制度設計の不備を突かれ、不当に利益をむさぼる外資や大企業が地域の資源を収奪し、さらに私たちの電気代の増加をも招いてしまっていることはあまり知られていない。FITの目的は、エネルギー自給率の向上、環境負荷の低減、地域の活性化や産業振興につなげることだったが、なぜこのような欠陥制度になってしまったのか。現在のメガソーラー問題にいたる日本の太陽光発電の補助金制度を検証するとともに、本来あるべき再生可能エネルギーの普及と持続可能な地域社会の未来について、皆さんとともに考えていきたい。

太陽光発電の発電量推移

 日本で太陽光発電の普及を促す補助金制度が初めて導入されたのは1994年の「住宅用太陽光発電システムモニター事業」からでした。データ収集やコスト削減・技術革新につなげることが目的です。さらに、それに続く「住宅用太陽光発電導入促進事業」と併せて二つの設置時補助金制度で10kW未満の家庭用を中心に普及を図ってきました。ただ、当初の導入コストは1kWあたり約200万円と、現在と比較にならないほど非常に高額だったこともあり、初期費用に補助金を出す事業の終了時の累計導入容量は、戸建て住宅の1%程度の約142万kWと普及はごくわずかでした。

 その後、停滞する市場を打破するため、2009年に家庭や事業所で生み出された電力のうち、自家消費されなかった余剰分の電力だけ電力会社が買い取る「余剰電力買取制度」がスタートする。買取金額は設備投資が回収できるかどうか微妙な価格設定、買取期間もたった10年間だけに限定されました。制度によって導入ペースは回復されたものの、2011年末時点での累計導入容量は約500万kW。緩やかな増加にとどまりました。

 2011年の福島第一原発事故を契機に急速に広がった脱原発の世論にも後押しされ、翌年2012年7月に「FIT(固定価格買取制度)」がスタートします。FIT制度が始まって2020年代半ば(2024〜2026年時点)には、10kW以上の事業用を中心に累計導入容量は7,500万kWを突破。世界第3位〜4位規模へ爆発的な勢いで右肩上がりに増加し、日本の全発電電力量における太陽光発電の割合も、震災前の1%未満から現在では約10%に達するまで急拡大していきました。

図1 太陽光発電の国内導入量とシステム価格の推移(出典:資源エネルギー庁「エネルギー動向(2026年版)」より作成

図1 太陽光発電の国内導入量とシステム価格の推移(出典:資源エネルギー庁「エネルギー動向(2026年版)」より作成

メガソーラーが各地で引き起こす様々な問題

 私が暮らしている宮崎県は全国でもトップクラスの日照時間を誇っています。それゆえ早くから「ソーラーフロンティア構想」を掲げ、太陽光発電の製造・発電・活用の三拍子が揃った一大拠点を目指し、地域活性化・エネルギー自給計画を策定していました。しかし、構想最大の目玉であり製造の柱だったソーラーフロンティア社(元昭和シェル石油、現出光興産グループ)は撤退を余儀なくされ、大企業はメガソーラーを乱立させ、自然災害と地域トラブルを引き起こしている。

 一例を挙げれば、2014年に宮崎県川南町を流れる平田川が集中豪雨により氾濫した際、近隣2カ所のメガソーラーが深刻な浸水被害を受けました。隣接する製材所から大量の木材が流れ込み、パネルや架台をごっそりと巻き込んで大破・崩壊しました。災害リスクの高い河川のすぐ近くや氾濫原のような低い土地だったにもかかわらず、当時は規制や厳格なリスク評価なしに建設許可が下りていることから、立地選定における制度の緩さが露呈した事例といえるでしょう。宮崎県のみならず全国各地で起こっています。

 また、メガソーラーをめぐってもっとも広く認知されている問題はおそらく景観をめぐるトラブルです。阿蘇のカルデラに広がる広大な牧草地では収益性が高いと目をつけた地域外の事業者によって自然豊かで風光明媚な土地が黒いパネルで埋め尽くされました。景観が悪くなった、パネルの反射光がまぶしい、などの苦情が相次いで出るようになりました。同様の事例は枚挙にいとまがありません。

 一部の事業者にあっては地元への説明会を一切開かないなど、強引な開発もおこなわれています。地域への愛着や安全配慮に欠けた都市部の大企業や外資系ファンドが「再エネ賦課金」を目当てに土地を買い漁り、利益だけを得て別の事業者へ横流しし撤退してしまうグレーな転売ビジネスも横行していました。調べた限り宮崎県でもゴルフ場跡地や斜面の「転売・開発」を巡る不透明な取引は呆れるほど多くありました。宮崎市や国富町にまたがる丘陵地、閉鎖されたゴルフ場跡地を利用した超巨大メガソーラー(数十MW級)などが県内各地で次々と建設されていました。

宮崎県国富町三名にある廃業したゴルフ場跡地にできたメガソーラー。運営事業者のNTTファシリティーズは工事も自前でおこない、かなり安く設備を作っていたという(現在はNTTアノードに移管・統合)。当時聞いたところ「企業秘密です」という回答だった。ここは、ほぼ元の地形をそのまま利用している。県内ではこうした案件が他にもある。© 中川修治

宮崎県国富町三名にある廃業したゴルフ場跡地にできたメガソーラー。運営事業者のNTTファシリティーズは工事も自前でおこない、かなり安く設備を作っていたという(現在はNTTアノードに移管・統合)。当時聞いたところ「企業秘密です」という回答だった。ここは、ほぼ元の地形をそのまま利用している。県内ではこうした案件が他にもある。© 中川修治

宮崎県串間市西方で2014年にやっと動き出した認定2年目の高額買取り保証36円/kWhのメガソーラー。入札制度に変わってからの補償価格は10円以下なのでその4倍近くの売り上げになる。年間7億円の売り上げと試算される、まさにボロ儲け案件。近くの民家に被害が出ては困るというので移転費用を払ってまで建設した。建設費は山を削ったかなりの大規模工事。完成後、台風の豪雨により崩落して、下流域の田んぼには泥水が流れ込んだ(写真中央付近の白くなっている箇所)。© 中川修治

宮崎県串間市西方で2014年にやっと動き出した認定2年目の高額買取り保証36円/kWhのメガソーラー。入札制度に変わってからの補償価格は10円以下なのでその4倍近くの売り上げになる。年間7億円の売り上げと試算される、まさにボロ儲け案件。近くの民家に被害が出ては困るというので移転費用を払ってまで建設した。建設費は山を削ったかなりの大規模工事。完成後、台風の豪雨により崩落して、下流域の田んぼには泥水が流れ込んだ(写真中央付近の白くなっている箇所)。© 中川修治

 これらは「未利用地の有効活用」という体裁を取るものの、事業主体が外資系SPC(特定目的会社)や東京の資本へと次々に転売・移行され、地元自治体や周辺住民は「最終的に誰が責任を持つのか」が把握しにくくなっています。「事業主体の不透明さ」の温床ともなっており、事業者自身が倒産・転売を繰り返して最終的な廃棄責任(パネルの放置)をうやむやになる懸念が、SNSや報道を通じて全国に広く知られるようになりました。

 地方自治体からすればメガソーラーは多少の固定資産税収入は増えますが、製造業のように地域に雇用を生むわけではありません。つまり本来のFITの目的であった地域の活性化や経済振興にはほとんど寄与しません。メガソーラーは地域から一方的に利益を吸い取っていくだけで、環境破壊や災害リスク、景観悪化など不利益は地域住民や自治体に押し付けています。事業者側にこうした外部不経済のコストを内部化させるためにも制度をさらに見直していく必要があります。国は現在、新たに2022年4月にスタートしたFIP制度への移行や、説明会の義務化など規制を強化していますが、初期の杜撰な制度設計が残した爪痕は今なお各地の住民と地方自治体を苦しめ続けています。

宮崎県内では最大規模となる宮崎市細江のメガソーラー。通常の画角サイズでは写せない広さ。リゾート開発バブルで県が差し止めたゴルフ場の未開発地に目を付けた、世界各地で大規模開発を手掛けるアメリカ・カリフォルニアの投資家が東京に会社を作り、メガソーラーとして整備。開発費用は300億円、最終総売上げが1兆円とも言われている。この企業は全国各地にメガソーラー開発を行なっている。© 中川修治

宮崎県内では最大規模となる宮崎市細江のメガソーラー。通常の画角サイズでは写せない広さ。リゾート開発バブルで県が差し止めたゴルフ場の未開発地に目を付けた、世界各地で大規模開発を手掛けるアメリカ・カリフォルニアの投資家が東京に会社を作り、メガソーラーとして整備。開発費用は300億円、最終総売上げが1兆円とも言われている。この企業は全国各地にメガソーラー開発を行なっている。© 中川修治

高い買取価格が意味すること

 高い買取価格で売電し利益を上げた事業者は制度を上手に利用しただけで、それのどこが悪いのか。果たしてそうでしょうか。FITやFIPの補助金は電気代に上乗せされる「再エネ賦課金(再生可能エネルギー発電促進賦課金)」というものが原資になっています。つまり、家庭も企業も含めたすべての電力利用者から使用料に応じて一律に集めた電気代の一部が元手になっているのです。たとえ近所にメガソーラーがなく景観被害に遭ってなかったとしても、“上手に制度を利用した”だけの事業者に上乗せされた電気代という形で私たちはお金を奪われているということです。

電気料金 = 基本料金 + 電力量料金 + 再エネ賦課金 ± 燃料調整費等

 たいした額ではないのでは? たしかに当初はたいした額ではありませんでした。再エネ賦課金の単価は、制度が始まった2012年は0.22円/1kWhでしたが、買い取り量の増大に伴って単価は上がっていき、2026年現在はなんとその約19倍(4.18円/kWh)まで上昇しています。4.18円/kWhというのは一般的な家庭の電力料金(1kWhあたりの単価)の約10%〜13%にあたります。一般的な世帯で年間負担額が約2万円〜2.5万円という試算もあり、電気代高騰のみならず昨今の物価高に苦しむ私たちにとって決して小さくない金額です。

 メガソーラー企業の多くは、環境に配慮して再エネの普及を通じて社会貢献をしていると立派なホームページなどで謳っています。しかしその実態はもっともらしい体裁を旗印に補助金制度の欠陥を悪用し、実質的には国の保証付きの高利回り投資商品としてメガソーラーを乱立させ、国民全体にとっても大きな負担を強いているのです。

地域に最後に残された資源を取り戻す

 地方にとっては奪われているのは実は電気代だけではありません。もうひとつ読者の皆さんに考えていただきたい問題はその土地固有の資源が地域外に奪われてしまっているという事実です。その土地の資源はその土地に振りそそぐ太陽の光であり、吹く風であり、川の流れであり、そこに湧き出る地熱です。地下の化石燃料や金属などの資源と同じく、いまやそれらの地域固有の資源が生み出す価値が地方から都市へと奪われていっています。その土地固有の資源の価値は本来どこに帰属されるべきなのかという視点です。

中川 修治

『地球号の危機ニュースレター』
No.548(2026年10月号)

テキストのコピーはできません。