「地球号の危機ニュースレター」537号(2025年6月号)を発行しました。

〈アフリカの旅7〉ツムクェでの暮らしが始まる

村一番のお店の前には多くの村人たちが集まる © 岡部一明

村一番のお店の前には多くの村人たちが集まる © 岡部一明

リンゴ、干しブドウ

 毎日探索のかいあって、ツムクェに来て2週間ほどして1軒のお店にリンゴが入荷したのを見つけた。無造作に棚の箱に入っていた。どこだか聞き取れなかったが、別の街から来たものという。15Nドル(40円)。当然ながら爆買い。外見に似ず、中身は歯ごたえがあり新鮮だった。

© 岡部一明

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 やがてリンゴも切れた。次いつ入るか待つがなかなか入らない。再び頼みの綱は玉ねぎだけだ。毎日毎日2度の食事ごとに玉ねぎを切るというのは相当のストレスだ。目に染みるだけではない。ここの玉ねぎは外皮をむくのが結構難しいのだ。

 と、そのうち、店に干しブドウ(レーズン)が常に置いてあるのに気が付いた。これだ。干しブドウは干してあっても、ビタミンCその他いろいろ滋養分が含まれる。これでC問題は恒久的な解決だ。

1700円の宿が見つかった

 オンライン予約サイトに載っているツムクェの宿は、既述カントリー・ロッジだけだが、グーグルマップには他にツムクェ公営ゲストハウスY2Kゲストハウスとやらが載っている。確かめに行って、料金を聞くと、前者1泊300Nドル(2500円)、後者400Nドルだった。1ヶ月泊まるからディスカウントしないかと前者と交渉したら、簡単に200Nドル(1700円)にまけると承諾してくれた。これに入らないわけにはいかない。すでに中は見学していて、各部屋にトイレ・シャワーがあり、共同キッチンがあることも確認していた。

 1泊1700円で月5万円。「サン族の首都」の村に、ゆっくり滞在することができるのだから、こんなありがたいことはない。テント暮らし3日間の後ここに入った(5月26日)。

蚊と水回りと

 冷蔵庫に入れといた酸っぱい牛乳(地元産酸乳)をゴクリとあおると、天井と壁一面に蚊がびっしり付いているのが目に入る。ガス・コンロの元栓をひねると、蚊の集団がむあっと四散するので、料理は手早く終わらせなければならない。

共用キッチンとシャワー室の天井・壁はこのような状態となる。無数の小さいポチポチは蚊。この美しく一面に広がる斑点には、芸術的感動の身震いを禁じ得ない© 岡部一明

共用キッチンとシャワー室の天井・壁はこのような状態となる。無数の小さいポチポチは蚊。この美しく一面に広がる斑点には、芸術的感動の身震いを禁じ得ない© 岡部一明

 水道は、ちろちろ糸を引くように出るだけなので(「ちょろちょろ」までも行かない)、お椀に溜め、少しずつ鍋に入れて煮炊きをする。幸いにガスコンロの火も弱いから、鍋の水が先立って沸騰・蒸発してしまう心配もない。

 つまり、ちゃんと水とガスがあり、料理ができるのだ。こんな素晴らしいことはない。買ってきた冷凍肉を電子レンジで解凍して沸騰なべに入れ、煮込みラーメンをおいしくほうばらせて頂いている。部屋にテーブルがないので土間に鍋を置き、そこから、カラのヨーグルト容器だかに少しずつよそって食べる。(そのうち、鍋から直接食べるようになった。)

 食器洗いにしても、あのちろちろ水で首尾よく洗う技術をここ2日くらいで身に着けた。洗剤などを使う必要はない。

 私の部屋のよいところは、蚊の巣窟たる共用キッチン・シャワー室エリアから離れていることだ。1度、室内で蚊取り線香をガン焚きして掃討し、入り口付近に殺虫剤を噴霧しておけば、さほど入ってこない。しかも、室内は白い壁と天井なので、とまっている蚊はよく視認でき、次々に私の折り紙ハエたたきの餌食になっている。

部屋の水道から水が出ない

 部屋内の水道・トイレシャワーは最初から水が出ず、明日までには直すから、と帰ったマネジャーは翌日も来ない。しかし、たくさん空きのあるこのゲストハウスには水の出る部屋もあり、一時はそこの部屋のカギを渡してくれたので、用事をそこで済ませることができた(2日間だけ)。大きなたらいも見つけたので、そこに水を満たし、自分の部屋の水場に置いておく解決策も考案した。

 シャワーは共同シャワー室を使う。なぜかこの共同シャワーは水がよく出る。たらいの水もここで汲む。夜、シャワー湯栓をひねるとずっと冷水のままなので、これはダメかと思ってあきらめた頃、お湯が出始め感動した。昼間の半砂漠直射日光で温めた温水だ。夜になっても相当長い時間、出続けてくれる。

 そしてこの私の部屋の最大の長所は、ベッドが清潔なことだ。真っ白に洗濯されていて、ダニその他が居る気配はない。昨夜も気持ちよく眠れた。水が出ない部屋で、ずっと客が泊まってなかったからかも知れない。

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