「地球号の危機ニュースレター」537号(2025年6月号)を発行しました。

〈アフリカの旅7〉ツムクェでの暮らしが始まる

村一番のお店の前には多くの村人たちが集まる © 岡部一明

村一番のお店の前には多くの村人たちが集まる © 岡部一明

ナマ族

 「え、ナマか。コイコイ族の一派だよね。サン族と同じく古い民族だね。コイサンとも言っているよね。」

 驚いた。さっそくコイサン族ゆかりの人に会えた。「この辺にはナマ族もたくさん住んでるの?」「いや。僕はナミビア南部の方から来た」とネルソン君。

 一般に「コイサン族」とまとめられている南部アフリカの先住民の中で、サン族は9万人、コイコイ族は30万人と推計される。そのコイコイ族の中の最大種族が約20万人のナマ族だ。ナミビア中・南部、南ア北部を中心に居住し、独自の民族性を保持した集団として知られる。

 災い転じて福となす。私はさっそくネルソン君と友達になってしまった。「ネルソン・マンデラのネルソンじゃないか」「そう言われることが多いね。」

 しかし、ネルソン君だけでなく、カリンさん(彼女はこの村には珍しい白人だった)もそうだが、彼らの親切さには業務を越えたものがある。心底、人に親切にしたいという気持ちが伝わってきて気持ちよい。

夜の妖気

 確かにサバンナ地域の夜は冷えた。昼間は直射日光が強く酷暑だが、夜になると日本の晩秋程度まで冷える。ジャンパーどころか、薄いテントだけで芝生の上に寝てたら危険だ。借りたマットレスとぶ厚いブランケットは強い味方だった。夜風の中で暖かいい眠りがとれた。

 テント生活なんてしばらくしていない。キャンプ客は他に居ないし、ほとんど音のない静かな土地。しかし、夜の空気や動物の気配が漂ってきて、文明の音に囲まれて暮らしている身には落ち着かないものがある。牛の声をさらに巨大化した豪快な鳴き声も聞こえた。象だという。宿のすぐ近くまで野生の象がやってきている。朝は、ニワトリが、夜明けのかなり前、3時半ころに鳴き出すことを知った。

 テントは、ドーミトリーと違ってプライバシーがあり、中で何をやるのも自由でいい。共同のトイレ・シャワーも近くにあり、他にキャンプ客が居ないので私専用だ。各テント箇所のそばに炊事の場所があり、そこに電源まである。PCやスマホの充電ができる。朝は暗いうちに起きて、そこにパソコンをつなぎ、石のテーブルの上で一仕事できる。

 昼は、約1キロ離れた村の中心まで行って歩き回り、帰ってきてテントの入り口に腰を下ろして食事をほおばる。空は毎日快晴で雲がなく、突き通った空間。直射日光はきついが、キャンプ場の芝生にはところどころ木陰ができる。そこに寝転んで昼寝する。直射日光さえさえぎれば意外と涼しい。穏やかな風になでられながら、テント生活もなかなか優雅だなあ。

夜のキャンプ場は、他に客がおらず静かだが、妖気が漂う。近くの炊事場には電源もあってパソコン仕事ができる © 岡部一明

夜のキャンプ場は、他に客がおらず静かだが、妖気が漂う。近くの炊事場には電源もあってパソコン仕事ができる © 岡部一明

昼は、直射日光でテントは灼熱になるが、あちこちに木陰ができ、芝生に寝転ぶと風が心地よい © 岡部一明

昼は、直射日光でテントは灼熱になるが、あちこちに木陰ができ、芝生に寝転ぶと風が心地よい © 岡部一明

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