「地球号の危機ニュースレター」532号(2024年10月号)を発行しました。

【日本と東南アジアで急増する水上太陽光発電】⑤ (終章) 台湾・彰化縣で増加中 近年に世界最大の期待大

辰亞と厚固が建設した水上太陽光発電

@井田均

現場の写真を撮る

かなり迷い、道であった人に教えられながらやっと着いた線西水道。よく見ると左側の遠くに広がる海面の上に太陽光発電用のパネルがあった。ただ遠方であるし、上下には狭い範囲に細く見えるので、写真撮影には向かない最悪の被写体と言える。 手前に横に延びる道路沿いに入域禁止の柵が設置してあった。その一部に海に向かって伸びる鉄板が敷かれた200mほどの通路を発見した。入口は簡単な鉄製の蛇腹型のものが設けられているだけで、その下部に高さ数十cmの隙間があった。「これなら下を潜り抜けられそうだ」 腹ばいになった。なんとかなりそうだ。運転手は阻止しようと大声を上げ続けていた。無視させて頂く。 ゆっくり歩いてゆく。先端に辿り着いた。だが近づいた海面には多量の水草が繁茂していて、その向こうに広がっている発電パネルには近づけず、理想的な写真は撮れなかった。 タクシーに戻った。走行する。いつのまにか前に1台の車が現れ、タクシーはその後をついて行った。瀟洒で大規模な建築物に入っていった。あ、これは日本の商社、丸紅の建物ではないか。 丸紅はこの地に水上太陽光発電施設を建設していた辰亞電力と厚固光電の2社を何年か前、買収し、ここ線西水道での水上太陽光発電事業に参画していた。 あれよあれよ、という感じで、いつの間にか私は丸紅を取材していた。「やはり事前にご連絡頂いていた方が有難いのですが・・・」などと非難とも取れる発言も聞かれたが、私としても状況が分からない。 日本人ではないが日本語を話す人と主に会話を交わした。その方は、線西水道の南部に建設されようとしている辰華について、①現在全く建設工事が進んでおらず、今は自然海面だけである。②しかも辰華の建設現場へ行こうとしても、道路には通行止めがあり行けない。と説明した。 仕方ない。ではこれ以上見ようとしても無駄ということだろう。引き上げることにした。

現場を再訪

再び彰化市役所に戻った。タクシーが市役所の向かい側に停車したその時、現れたのは張氏だった。「申し訳ありません。ちょっと外へ出ていました」 彼は私に、「辰華は現在、既に完成している」と言った。「事業完成の認可はまだだが・・・」と付け加えた。「では見に行けますか」と尋ねると、「もちろんです」と明快だ。 張氏は自らの座席に戻って3枚の現場地図を作ってくれた。海に浮かぶ辰華の写真を撮影するのに最適な地点を赤く表示し、ここの市役所方向からタクシーで行くルートも示した。さらにタクシーを止めて運転手にルートの説明もしてくれた。 水上太陽光発電所も同じ日に2回目だが、今度は前回見ることが出来なかったものを見ることが出来そうだという期待感が大きい。 車は線西水道に到着した。道はダートになりスピードが落ちた。左側に海を見ながら進む。あと左へ曲がれば一直線で目指す撮影地点に到達できるところで、ゲートに出会った。あ、ダメか。スゴスゴと引き返す他なかった。
行く手を阻んだゲート

行く手を阻んだゲート

途中、水面から数mの高さで幅10mほどの橋が海に突き出る形で建設されていた。入口も開いている。遥かな海上には何人かの作業員が何か仕事をしているようだ。 行ってみよう。歩き始めた。強風というより烈風が体に当たり、真っ直ぐには歩けない。100mか200mは歩いただろうか。風でカメラを構えるのもシンドイ。シャッターを何回か押したがほとんどがブレてしまった。タクシーに戻るのも一苦労だった。 張氏の教わり、撮影しようとした所は線西水道の西側に突き出た半島の先端部だ。ここへは行くことが出来なかった。では線西水道の東側からならどうなのだろうか。張氏は東側からは西側からに比べ遠い、ということで排除したのだが、東側には高速道路がかなり高い位置を走っている。撮影の角度では好条件だ。行ってみることにした。 高速道路に入った。だが運転手は二車線あるうちの撮影対象物の水上太陽光発電のパネル群から遠い方の左側を、しかもかなりのスピードで走り抜けた。私の撮影技術が高くないことも災いし、理想的な写真は撮れなかった。 「すみません。もう1度お願いします」 こんどは撮影対象に近い右側車線を、かなりスピードを抑えて走ってもらい、まあまあの写真が撮れた。帰路についた。 その日は彰化で1泊。翌日は台北経由で東京羽田へ帰った。

井田 均

『地球号の危機ニュースレター』 No.515(2023年5月号)

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