湯木 恵美
今朝の気温はマイナス10度に近かった。 ここまで寒いと、濡れたタオルを振り回すと凍る。 小学生の頃、濡れタオルを持って登校したことを思い出した。 振り回しながら思い思いの形に凍らせるのだが、振り方や速度によって、だいぶ違ったものになってしまうから結構技術が必要だった。
この凍らせタオル造形がとてもうまかった同級生がいた。実際に造形作家になったのだから、持って生まれた才能があったのかな?などと、懐かしく思い出しはしていたが、寒い 。
外猫の飲み水の器は、硬く硬く凍っているし、氷の圧で器ごと割れているものもある。 動物は、人間が思うよりずっと喉が渇くことはあまり意識されていない 。氷を舐めたのか、一部だけ小さく凹んでいるのを見て、急いでお湯を入れたり、新しい器を用意することが朝のルーティンだ。
私の住む地域は寒いけれど比較的雪が降らないのだが、今シーズンは特に少ない。ひたすら冷え込むだけで、カラカラになった地面に砂風が吹いて霞み、小さな竜巻をみることさえあった。 そんな異常な乾燥のせいか、火事が多い。年末年始から今日に至るまで、この短い間に近くで複数の火事があった。個人宅、居酒屋、老舗の酒蔵。 個人宅の火事は一人暮らしの家主が亡くなった。居酒屋は行ったことのあるお店だった。若いオーナーが工夫を凝らして頑張っている姿を見て応援していた。どんな心持ちでいるのだろうと胸が痛い。 老舗の酒蔵は創業130年とのことだった。毎日通っている道沿いにあり、全て焼け落ちたその敷地の広大さには驚いた。 信号で、その焼けた酒蔵の前に止まることがある。消火しているとは言え、焦げた何とも言えない匂いが車中に入ってくる。原因はなんだったのか、まだ明らにされてはいないけれど、鉄と木と形を成さない黒焦げの塊が積み重なっているだけの敷地。その広さゆえに、鎮火には16時間もかかった。 地域文化の一旦を担っていたとも言える親しまれていた酒屋。 再建に向けて支援の輪は広がりつつあるようだけれど、どうなっていくんだろう。 毎日見る焼け跡には、他県の車が止まっていることが多い。酒造関係者なのだろうか。打ち合わせのようなことをしている。 私も離れたところに車を止めて歩いて近くに行ったことがあった。写真に収めようと思ったけれど、できなかった。1日も早く、より良い方向へ進んでくれることを願ってその場所を後にした。
火事は恐ろしい。誰にとっても他人事ではない。 私たちは、猫ボランティアの一環として行き場のなくなった猫のシェルターを管理しているのだが、夜は無人になるから火は極力使わないようにしている。しかし24時間のオイルヒーターやエアコンなど、電気関係のものを多く使っている。毛埃などで、コンセントから発火しないだろうか。また、古い建物なので漏電等の心配もないとは言えない。心配でならない。火事になったら、シェルターにいる猫たちはどうなるのだろうかと考えると落ちつかない。いっそうすべての電気を落としてしまった方が心配しなくて済むかと考えることもある。外猫に比べたら、雨風に当たらないだけマシなのではないかと思うけれど、自由な猫と、室内フリーとは言え拘束されている以上、それにも踏み切れない。それ程に寒いのだ。それにしてもどうしたら良いのだろうか。
そんなある日、メンバーから連絡があった。シェルターの窓から外を見ると野焼きをしているのか、勢い良く火が上がって大変驚いたと。心配すぎて、きれいに火が消えるまで帰れないと言っていた。 気持ちがよくわかるしありがたい。きちんと鎮火するまで居てもらった。
火事は人ごとではないと肝に銘じつつ、 暖かくなる日が本当に待ち遠しい。
湯木恵美
『地球号の危機ニュースレター』
No.535(2025年4月号)