「地球号の危機ニュースレター」526号(2024年4月号)を発行しました。

いよいよ今年はパリ・オリンピック!  *その2*

© 鈴木なお

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家を貸して大儲け、でも貸してもらえない側は

 しかしパリ・オリンピックは、首都圏在住者に臨時収入を得る絶好のチャンスともなっている。外国や地方から訪れる観客に高値で家を貸し出せるからだ。私の知り合いでも家を貸そうと考えている人が数人いる。

 昨秋の世論調査によれば、首都圏在住者のうち15%(パリ市内在住者に限っては18%、スタッド・ド・フランス競技場のあるパリ北郊セーヌ・サン・ドニ県在住者に限っては25%)が自宅を貸して収入を得ようと考えている。

 そのうちの7割近くが初めて自宅を貸し出す人たちだというから、この千載一遇のチャンスを逃すまいとする勢いを感じる。しかも平均で、通常の賃貸料の3倍で貸し出そうとしているそうだ。なお、個人宅の人たちは、オリンピック期間中にだけ家を貸し出して、自分たちはその間に休暇に出ようという算段だ。

 しかし年中物件を貸し出している家主たちもまた、オリンピックに的を絞って収入拡大を狙っているらしい。家主の一部はすでに、賃貸物件を市場から引き揚げ、オリンピック期間中に巨額(たとえば2晩や3晩の賃貸料が普段の一か月分の賃貸料と同等)で貸し出すことを選んでいる。

 首都圏ではただでさえ賃貸住宅市場が逼迫しており、オリンピックを機に「儲ける家主」と「路頭に迷う店子」の対比が露骨になるのではないかという懸念や批判の声が出ている。

オリンピック期間中は学生寮のまで

 さらに、昨年末にフランスの行政最高裁判所の裁定が下って決定された事項に、オリンピック期間中の学生寮の徴用がある。学生の福利厚生を担う公的機関Crousが管轄する首都圏の学生寮が対象となる。

 政府によれば、これらの学生寮は普段から夏の間は3割相当の6000室が空室で、この空室のうちの半数強をオリンピックに従事する消防隊員、看護師、治安要員の宿泊場とするという考えだ。とはいえ、結果的には2000人以上の学生が夏の間ほかの宿に移る必要性が出る模様で、政府は、引っ越しを余儀なくされる学生に対して、必要に応じて学校近くの不動産を斡旋するほか、賠償として引っ越し手当を一律100ユーロと、オリンピック観戦券2枚を提供するとしている。オリンピックで追い出されたうえ、今秋から学生寮の寮費が最大3.5%値上がりすることが先日発表され、学生たちはため息まじりだ。

 ちなみにフランスは一般に高等教育機関の学費が安いことで知られるが(高額の学校もあるうえ全体的に値上がりが目立つが、確かに国立大学などは日本に比べ遥かに安い)、アルバイトなどで稼いだお金で学業を続けている者が多く、特に首都圏では安い学生寮に入ることで学校生活をギリギリで続けている者が少なくない。

 オリンピックに際しても、観戦に行ったりファンゾーンで騒いだりする余裕のある学生ばかりではない。学生以外も然りで、日々のあれこれに追われている庶民にとっては、家のテレビで見るのがせいぜいだ。私の周囲でもオリンピック開催に対する反応は非常に鈍く、本当に今年のオリンピックはパリで行われるのかと疑うほどだ。

 しかし、今は不安や批判ばかりがクローズアップされていても、7月26日の開会式を皮切りにフランス全体が盛り上がり、笑顔でオリンピックを楽しむのかもしれない。せっかくの祭典なのだから久々に浮き浮きした気分を味わいたいと、皆が心の底で思っているのかもしれない。

© 鈴木なお

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鈴木 なお

フランス在住

『地球号の危機ニュースレター』
No.526(2024年4月号)

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