「地球号の危機ニュースレター」533号(2024年11月号)を発行しました。

いよいよ今年はパリ・オリンピック!  *その2*

© 鈴木なお

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鈴木 なお

 パリで今夏、オリンピックが7月26日から8月11日まで、パラリンピックが8月28日から9月8日まで開催される。二か月前には「セーヌ川上の開会式」を取り上げたが、今回は首都圏を中心に「オリンピックで影響を受ける市民生活」について触れようと思う。

幾つかの変更が発表に

 その前に、開会式について予定に変更があったので一言お伝えしたい。まず、式典の観客数が再び下方修正された。「計画当初は水辺の低い岸(有料エリア)に10万人、川を見下ろす高い岸(無料エリア)に50万人の計60万人の予定だったが、セキュリティー上の問題から水辺に10万人、上の河岸に30万人となった」と記したが、その後フランス政府によって「水辺の有料エリアに10万4000人、上の河岸の無料エリアに22万2000人」への変更が発表された。

 しかも「無料エリアは招待客のみ」が占め、一般客は入れないことが決まった。第三者機関が招待客をリストアップし、そのリストを国、首都圏のオリンピック受け入れ自治体、オリンピック組織委員会が吟味の上、最終的な招待客を選定する。   

 最終リストは不動なわけではなく、たとえば当局が危険とみなした場合はその人物の招待は取り消される。オリンピック開催までまだ数カ月あるため、状況次第で開会式の観客数はさらに減る可能性もある。 次に、セーヌ河岸の古書店(ブキニスト)が移動しなくても良いことになった。緑色のトタン箱を店舗とするブキニストは、開会式の安全上・景観上の観点から過半数(900箱のうち600箱)が一時的に退去することになっていたが、相次ぐ反対の声を受け、マクロン大統領の鶴の一声で現在の場所に残っても良いことになった。とはいえ、トタン箱の中に爆弾を仕掛けられたらどうなるのだろう。観客が箱の上に立ったり座ったりしたらどうなるのだろう。杞憂に終われば良いのだが。

オリンピック期間中のテロや通勤通学に募る不安

 さて、今年1月に発表された世論調査によると、フランス国民の65%がオリンピック期間中の安全問題に不安を抱いている。これは同じ会社が実施した昨秋の調査結果よりも3ポイント高く、政府やオリンピック組織委員会が機会あるごとに「万全」と断言しているものの、国民を説得できていないことを示している。

 フランス人が何かにつけ批判的な国民であること、長引くウクライナ戦争やイスラエル情勢が背景にあることは間違いないだろうが、コロナ、自然災害、経済問題などで、もはや誰一人「楽観的になり切る」ことができず、すべてに一抹の不安がつきまとうようになった感じがする。

  政府は開会式に治安要員4万5000人、その他の日にも相当数を動員するとしている。ただ、民間警備員の数が足りないと言われており、おまけに、民間警備員やオリンピック・ボランティアの応募者をチェックしたところ、これまでに8万9000件の調査を通じて289人が不適格と判定された。そのうちの6人は当局が過激な要注意人物として監視対象としている通称「Sファイル」に載っている者、25人は国外退去処分を受けた者だったという。危険人物がこれらの公募に紛れ込むのは想定内だったろうが、調べる方は本当に大変な作業だと思う。

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国民の不安要因の筆頭は?

 さて、セーヌ川はブルゴーニュ地方の山中に源流があり、パリの中央を貫き、パリを過ぎてからノルマンディーにかけて幾度も急蛇行し、最後はル・アーヴルとオンフルールに挟まれながら英仏海峡に注いでいる。つまり開会式の行進は、パリ市内をセーヌ川上流から下流へとゆったり進むわけだが、たとえ時間差をつけてスタートするとしても、116隻とはすごい数だ。私もセーヌ川の遊覧船には何度も乗ったが、これほど多くの船が一丸となって一方向に進む様子は想像できない。開会式は20時24分スタートで、いつものようにギリシャが先頭を切り、開催国であるフランスが最後尾だ。23時50分頃、すべての選手団がトロカデロに到着する。フランスの7月末の日没はだいたい21時半ごろなので、世界中の人々に空が刻々と変化して石造りの街の色が変わっていく様子を楽しんでもらうと同時に、ご自慢のパリの夜景をたっぷり見てもらおうという計算だ。プログラムの詳細は「秘密」で、サプライズ満載の夜になりそうだ。

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